今回の連載は「『ビリー・エリオット』(『リトル・ダンサー』)にみる「男らしさ」の変化」です。

 今回の連載記事は「『ビリー・エリオット』(『リトル・ダンサー』)にみる「男らしさ」の変化 」。明日から始まるマシュー・ボーン白鳥の湖』にあわせてビリー・エリオットのことを書きました。今、ゼミで『ビリー・エリオット』研究をしているので、最後にゼミ生への謝辞もあります。

 

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8月4日に下北沢B&Bにて清田隆之さんとイベントをします

 8月4日、下北沢のB&B書店にて桃山商事の清田隆之さんとイベントをします。清田さんの新刊『よかれと思ってやったのに──男たちの「失敗学」入門』(晶文社)が来週発売ということで、最近新刊が出た2人で「男らしさ」について話すという感じになる予定です。参加希望の方はこちら↓からどうぞ。

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よかれと思ってやったのに  男たちの「失敗学」入門
清田隆之(桃山商事)
晶文社
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表象文化論学会第14回大会、パフォーマンス「ARICA Presents『終わるときがきた』──ベケット『ロッカバイ』再訪」

 京大で開催された表象文化論学会第14回大会1日目に行ってきた。企画委員長なので(?)ちゃんと実況してまとめた。

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 表象文化論学会の大会ではパフォーマンスが上演されることになっているのだが、今回はなんと開催校からのコミッションでARICAに作ってもらった1回かぎりの新規制作演目が上演された。「『終わるときがきた』  − ベケット『ロッカバイ』再訪」ということで、ベケット『ロッカバイ』の翻案である。これは京大芝蘭会館稲盛ホールという場所の窓の構造などにあわせてきわめて緊密に作られた演目で、ふつうなら20分くらいで終わってしまう『ロッカバイ』を1時間以上かけてやるというものだ。『ロッカバイ』は揺り椅子に座っている女のモノローグなのだが、新作では揺り椅子ではなくふつうの椅子に座っている。わりと作り込んだ机と椅子のセットの後ろにスクリーンがあり、椅子に座って演技している女(安藤朋子)とそっくりの映像が後ろのスクリーンにもうつっている…のだが、同じ台詞が反復されるたびに、だんだん舞台上の女と映像の動きにずれが生じる。ベケットの特性のひとつである「芝居を見るつらさ」と「長い人生のつらさ」の重ねあわせが存分に発揮された作品になっている一方、少しベケットから離れた新しいところもある。まあ見る人を選ぶしここまで「つらい」演目だと相当好みがあると思うのだが、個人的には大変よかったと思う。1回しか上演されないとは残念だ。

 

トーシロの集まりふたたび~『ラスト・ムービースター』(ネタバレ注意)

試写 試写会で『ラスト・ムービースター』を見てきた。バート・レイノルズの遺作である。

 かつてはアクション映画のスターとして大人気だったヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)は、引退してロサンゼルスで老犬とともにひとりで静かに暮らしていた。愛犬が病死し、落ち込んでいたところにナッシュヴィルの映画祭から功労賞受賞のお知らせと招待が届く。あまり乗り気でないヴィックだが、友人ソニー(なんとチェヴィー・チェイス!)のすすめで行くことにする。ところがナッシュヴィルの映画祭は映画オタクどもが手作りで実施しているショボいファン祭りで(一応ナッシュヴィルには大きな映画祭があるのだが、それではなくフリンジみたいなほうだった)、アテンドのリル(アリエル・ウィンター)は非協力的、ヴィックは怒って映画祭でひどく無礼な振る舞いをするが…

 

 バート・レイノルズ知名度や業績の点ではちょっとビミョー感のある老いた映画スターを演じるという、「いや、それは本人なのでは」というリアリティで成り立っている作品である。バート・レイノルズは大スターだし、レイノルズの映画が好きな人は今でもたくさんいるが、作中でも言及されているクリント・イーストウッドロバート・デ・ニーロに比べると名作と呼ばれるような誰でも知っている代表作が少なく、ちょっとカルト映画っぽいもの、知る人ぞ知るというような作品が多い。この「スターなのに誰でも知ってる名優というわけではない」感があまりにも自然に醸し出されており、ここがこの作品の魅力になっている。

 お話としては単純でそこまで新しいところはない作品で、しかも日本未公開のA Bunch of Amateurs (2008、『トーシロの集まり』)にコンセプトがそっくりである。これも年をとり始めた落ち目のスターが『リア王』の主演だということでイギリスの「ストラトフォード」に渡ったところ、似た名前の別の町で田舎の劇団の公演に呼ばれただけだった…という話で、バート・レイノルズはこんな役ばっかりやってるようだ。ただ、『ラスト・ムービースター』のほうがちょっと洗練されており、映画オタクたちの手作り素人映画祭の描き方などはけっこうリアルである。金をかけずにパブで開催し、ネットで集客するこのオタクイベントみたいな映画祭はけっこう魅力があり、おそらくここに出てきている映画オタクどもと同類である私からするとすげー楽しそうでいい祭りじゃないか、行ってみたいな…と思えるのだが、ハリウッドの派手なスタイルにかぶれているヴィックには非常にくだらないものにうつってしまう。

 

  なお、この映画はベクデル・テストはパスしない。