書評
本日公開された表象文化論学会のニューズレターRepre18に杉山博昭『ルネサンスの聖史劇』の短いレビューを書きました。関連エントリ:「杉山博昭「隠された実母――『モーセとエジプト王ファラオの聖史劇』に投影された社会的関心」」
ジョアン・シェフ・バーンスタイン『芸術の売り方――劇場を満員にするマーケティング』山本章子訳(英治出版、2007)を読んだ。 豊富な事例を紹介しながら芸術(主に舞台芸術とクラシック音楽)をどうマーケティングすべきか論じており、かなり実用的な著作である…
中野春夫『恋のメランコリー――シェイクスピア喜劇世界のシミュレーション』(研究社、2008)を読んだ。 英国ルネサンス期の上演慣習や社会階層、婚姻制度、財産制度、医療などに留意しながらシェイクスピア喜劇の恋愛の世界を再構成してみようという試みで、研…
↓こちらの本に入っている論文Allison P. Hobgood, 'Feeling Fear in Macbeth'(29-46)を読んだ。 この論文は今でも史上トップクラスに恐ろしい芝居として伝説的である『マクベス』をテーマに、恐怖が初期近代においてはむしろ感染する肉体的な病に近いものと…
気谷誠『西洋挿絵見聞録―製本・挿絵・蔵書票』(アーツアンドクラフツ、2009)を読んだ。 挿絵、製本、蔵書票についての基本的な話題をかなり広くかつ易しくカバーしており、とくに近代フランスに関しては図版も豊富で見るだけで面白いので、本の歴史に興味あ…
Bettina Wagner and Marcia Reed, eds., Early Printed Books as Material Objects: Proceeding of the Conference Organized by the Ifla Rare Books and Manuscripts Section Munich, 19-21 August 20 (IFLA Publications) (Walter de Gruyte, 2011)をだい…
Oya Reiko, Representing Shakespearean Tragedy: Garrick, the Kembles, and Kean (Cambridge University Press, 2007)をかなり前に読み終わったのでメモ。 18世紀のシェイクスピア悲劇と役者に関する研究書で、とくにエドマンド・バークの崇高論とシェイク…
山崎まどか『ときめきのガールズ・ムーヴィ 女子映画スタイル』(講談社、2006)に目を通した。 いわゆるchick flickの日本語版カタログとして使用できると思うのだが、最近はキューティー映画関係のウェブサイトもいっぱいあるのでこういう本は役割を終えたの…
『イギリス映画と文化政策――ブレア政権以降のポリティカル・エコノミー』(慶應大学出版会、2012)を読んだ。 けっこう期待して読んだのだが、正直期待したほどおもしろくなかったかも…舞台とかオリンピックに関する論文は結構興味深いと思ったのだが、タイト…
ジェイミー・ウォード『カエルの声はなぜ青いのか? 共感覚が教えてくれること』長尾力訳(青土社 、2011)を翻訳で読んだ。以前に英語のほうはつまみ読みしていたのだが、だいぶ内容を忘れていたな… 内容は共感覚に関する基本的な情報をわかりやすく解説した…
モリーン・シーバーグ『共感覚という神秘的な世界-言葉に色を見る人、音楽に虹を見る人』(エクスナレッジ、2012)を読んだ。 共感覚を持ったジャーナリストによる著書で、取材はかなりしっかりしていておもしろいところもたくさんあったのだが、昨日の本同様…
リン・ハント編『ポルノグラフィの発明―猥褻と近代の起源、一五〇〇年から一八〇〇年へ』(Lynn Hunt, ed., The Invention of Pornography: Obscenity and the Origins of Modernity, 1500-1800, Zone Books, 1996)を読んだ。初期近代のポルノグラフィについ…
上野千鶴子『近代家族の成立と終焉』(岩波書店、1994)を読んだ。 10年以上前の本なので情報が古くなっているところもあり、とくにたぶんヨーロッパ中世の家族や女性史研究とかはこのあとにけっこう発展したと思うのし、あと経済状況が変わって格差の研究も進…
楠明子『シェイクスピア劇の〈女〉たち―― 少年俳優とエリザベス朝の大衆文化』(みすず書房、2012)をやっと入手して読んだ。 シェイクスピア劇の女性表象を、少年俳優が女役を演じていたということに着目して読み解く論考集で、これだけだと結構まあ先行研究…
八木谷涼子『なんでもわかるキリスト教大事典』(朝日文庫、2012)を読んだ。 この本は基本、翻訳やジャーナリズムなどに携わる人向けのキリスト教ハンドブックで、宗派ごとの用語の違いとかを手軽に調べるためにはかなり重宝する本だと思う。とくにうちは東方…
杉山博昭「隠された実母――『モーセとエジプト王ファラオの聖史劇』に投影された社会的関心」、『西洋中世研究』4(2012), 149-69を読んだ。 この論文は15世紀フィレンツェの聖史劇『モーセとエジプト王ファラオの聖史劇』のテクストを主に「母」をめぐる表現…
米谷郁子編『今を生きるシェイクスピア』(研究社、2011)をやっと入手して読んだ。 とりあえず博論を書く前にどうにか入手して読んだほうがよかったかもと思った。同じアダプテーションを扱っていても私とはかなり関心のあり方が違うのだが(うちは情報伝播と…
ジャック・ボドゥ『SF文学』新島進訳(白水社、2011)を読んだ。これは西洋SF小説の歴史と各ジャンルの概要を新書一冊くらいのコンパクトサイズで解説しようというものである。 前半はSF小説の歴史、中盤はアメリカ・UK・フランスを中心にした地域ごとの特徴、…
少し前にデイヴィッド・ワインバーガー『知るには大きすぎて:事実は事実ではなく、専門家はどこにでもいて、部屋で一番冴えてるヒトは部屋自体』(David Weinberger, Too Big to Know: Rethinking Knowledge Now That the Facts Aren't the Facts, Experts A…
なんとこの年になって初めてアンドレア・ドウォーキンの『インターコース』をちゃんと最初から最後まで読んだ。 とりあえず、もっと早く読んでおけばよかったと思った。前半の大部分は小説や戯曲などを対象とした女性と性の表象史分析で、ひとつひとつの文学…
博論執筆中にとぎれとぎれに読んでいたLukas Erne, Shakespeare as Literary Dramatist(Cambridge University Press, 2007)を最初っから最後まできちんと通読した。これは近日中に新版も出る予定。 20世紀後半のシェイクスピア研究はかなり舞台中心になって…
小林恭子『英国メディア史』(中公選書、2011)を読んだ。 非常に本格的な英国メディアの通史で、15世紀のキャクストンの印刷事業とか聖書の発行の話から書き起こし(このあたりは軽く触れる程度だけど)、18世紀に定期刊行物が多数発行されるようになってから現…
ダール・ラーセン『モンティ・パイソン、シェイクスピア、及びイングランドルネサンス演劇』(Darl Larsen, Monty Python, Shakespeare and English Renaissance Drama(Mcfarland, 2003)を少し前に読んだのだが、この間の歴史コミュニケーション研究会の映画…
19世紀〜20世紀はじめの英国の女性の自衛に関する研究書、Emelyne Godfrey, Femininity, Crime and Self-Defence in Victorian Literature and Society: From Dagger-Fans to Suffragettes, Palgrave Macmillan, 2012(エメリン・ゴドフリィ『ヴィクトリア朝…
キャトリン・モラン(Caitlin Moran)の自伝的エッセイ、How to Be a Woman「女になる方法」(Ebury Press、2011)を読んだ。とにかくユーモアがあって笑えるので本当にオススメ。 キャトリン・モランはウォルヴァーハンプトンのカウンシルハウスで育ったアイリ…
連れ合いが献本もらったので、それを奪ってダニエル・ドレズナー『ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える』谷口一、山田高敬訳(白水社、2012)を読んだ。 これ、ゾンビ本のフリをしているが実際は国際政治理論の入門書で、ゾンビ災害が発生した際にどう…
森山至貴『「ゲイコミュニティ」の社会学』(勁草書房、2012)を読んだ。実を言うと昨日に引き続き、今日の本の著者も私の友人である。 まず、この本について一番すばらしいと思ったところは問題意識である。この本はゲイやバイセクシュアルの男性の「集合性と…
レオ・ダムロッシュ『トクヴィルが見たアメリカ: 現代デモクラシーの誕生』(白水社、2012)をやっと読んだ。これはアメリカ政治の基本書として大変有名な『アメリカのデモクラシー』を書いた19世紀フランスの著述家アレクシ・ド・トクヴィルとその友達である…
Felicity Nussbaum, Rival Queens: Actresses, Performance, and the Eighteenth-Century British Theater(University of Pennsylvania Press, 2010)をやっと読んだ。 とにかく王政復古期演劇後期から18世紀半ばくらいまでのイギリスの女優に関しては今後基…
この間のアイリッシュスタディーズセミナーですごく面白い話をしていたショーン・キャンベルの新著、Irish Blood, English Heart: Second Generation Irish Musicians in England(Cork University Press, 2011)を読んだ。 話の内容はだいたいこちらの講演と…