歴史

女ひとり、芸に生きる〜『ストックホルムでワルツを』

実在のスウェーデンのジャズ歌手、モニカ・ゼタールンドの半生を描いた伝記映画『ストックホルムでワルツを』を見た。主に50-60年代、貧しいシングルマザーからスターになり、その後危機を経て復活するまでを描いた作品である。音楽はもちろんファッションや…

これを見れば戦車と装甲車の区別もつくようになる、リアリズムの戦争映画〜『フューリー』

デイヴィッド・エアー監督『フューリー』を見てきた。 これ、なかなかあらすじが解説しづらい作品である。というのも、第二次世界大戦中のドイツで、アメリカの戦車隊がボロボロになりつつドイツと戦っていく…という内容で、ほとんど戦闘してるか、休憩して…

ヴェルレーヌとランボー、泥沼不倫劇〜『皆既食』

クリストファー・ハンプトン作、蜷川幸雄演出『皆既食』を見てきた。原作は1967年の作品で、1995年にレオナルド・ディカプリオ主演で『太陽と月に背いて』として映画化されている。象徴主義の詩人アルチュール・ランボーとポール・ヴェルレーヌの泥沼不倫を…

新潟散策(2)會津八一記念館とにいがた文化の記憶館

旧齋藤家別邸に行ったあと、新潟メディアシップを見学。 まずは會津八一記念館に行ったのだが、ここは書が中心であまりよくわからなかった… 次ににいがた文化の記憶館に行ってきたのだが、ここはけっこう充実していた。テーマごとに郷土の偉人をパネルで紹介…

悪くはないが、構成に不満〜『シャトーブリアンからの手紙』

イメージフォーラムで『シャトーブリアンからの手紙』を見てきた。フォルカー・シュレンドルフの新作で、第二次世界大戦中にフランスで起こったドイツ将校の暗殺事件の報復として、共産主義者など150人のフランス人が殺害された史実を扱ったものである。「シ…

お菓子をくれなきゃいたずらするのは、アイルランドのジャガイモ飢饉のせいか?〜リサ・モートン『ハロウィーンの文化誌』

リサ・モートン『ハロウィーンの文化誌』大久保庸子訳(原書房、2014)を読んだ。ハロウィーンの文化誌posted with amazlet at 14.10.31リサ モートン 原書房 売り上げランキング: 13,548Amazon.co.jpで詳細を見る 比較的新しい祭りであり、またすごい早さで商…

公開文化講座 「明治大学シェイクスピア生誕450年記念祭 第2回」

明治大学であった公開文化講座「明治大学シェイクスピア生誕450年記念祭 第2回」に行ってきた。いろいろ人とあう約束とかあって全部出られたわけではないのだが、いちおうきいたところだけはとぅぎゃった。公開文化講座 「明治大学シェイクスピア生誕450…

駒場博物館「越境するヒロシマ―ロベルト・ユンクと原爆の記憶」

駒場博物館で「越境するヒロシマ―ロベルト・ユンクと原爆の記憶」を見てきた。反核運動に身を投じたユダヤ系ジャーナリストの活動を、広島との関わりを中心に負ったもので、かなり重い内容のものが多いが良かった。ユンク以外の人による反核関連資料もかなり…

フォー・シーズンズについて我々が知っている二、三の事柄〜『ジャージー・ボーイズ』

クリント・イーストウッドの監督作でフォー・シーズンズの伝記映画である『ジャージー・ボーイズ』を見た。原作は舞台でロンドンでもやっていたはずなのだが、未見。 基本的には1950年代初めから1990年頃まで、ジャージーの田舎町からアメリカを代表するバン…

キートンのように跳び、チャップリンのように恋する〜『バルフィ 人生に唄えば』(ネタバレあり)

インド映画『バルフィ 人生に唄えば』を見てきた。 舞台は1970年代のダージリン。主人公は耳が聞こえず、口がきけない青年バルフィ(ランビール・カプール)。バルフィはシュルティ(イリヤーナー・デクルーズ)に身ぶりだけで猛烈に求愛して相思相愛になるが、…

ポモセクシュアリティと歴史〜『ヒストリー・ボーイズ』

けっこう前になるのだが、世田谷パブリックシアターでアラン・ベネット作、小川絵梨子演出『ヒストリー・ボーイズ』を見た。なんか私、この芝居を本で読んだ気がしていたのだが、見てみたら覚えがなかったので勘違いだったみたい… 舞台は80年代シェフィール…

メガネのサンローランはいいが、話がイマイチ〜『イヴ・サンローラン』

『イヴ・サンローラン』を見てきた。 全体的に、サンローラン役をつとめる主演のピエール・ニネと、その恋人ピエール・ベルジェ役を演じるギョーム・ガリエンヌの演技を見るための映画で、脚本や編集にはちょっといろいろ問題があって起伏に欠けていると思っ…

美化しすぎ、お姫様万歳もの〜『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』

『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』は、ニコール・キッドマンがモナコ公妃になったグレース・ケリーの半生を演じるという伝記ものである。 これ、前評判がむちゃくちゃ悪いのでどれほどひどいかと思ったら、まあニコール・キッドマンの存在感や、ゴー…

18世紀の英国貴族の家庭で育った黒人女性ベルの半生を描く、気品溢れる歴史映画『ベル』

18世紀に英国貴族の庶子として育てられた黒人女性ダイド・エリザベス・ベルの半生を描いた伝記映画『ベル』(Belle)を見た。 ダイド・エリザベス・ベルはマンスフィールド伯爵の甥だったキャプテン・ジョン・リンジーと、おそらく奴隷であったと思われる黒人…

新装開店、第一次世界大戦展示が充実したロンドン帝国戦争博物館

ずーっと改装で閉館していたが、第一次世界大戦展示をパワーアップさせて新装開店したばかりのロンドン帝国戦争博物館に行ってきた。改装前に行った時の記事はこちら。 メインロビーは相変わらず、飛行機や車の展示。 戦場報道車両。 これは第二次世界大戦の…

Sex & Violins〜『パガニーニ 愛と狂気のバイオリニスト』

『パガニーニ 愛と狂気のバイオリニスト』を見てきた。パガニーニのスキャンダルまみれの後半生を描いた伝記モノだが、おそらく相当に脚色してある。意欲的な作品ではあると思うのだがそんなには面白くなかった…一言でいうと、Sex & Violinsって感じの映画。…

オズワルドのお兄さんが実に気の毒〜『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』

『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』を見てきた。 ケネディ暗殺に巻き込まれた市民たちの姿を切り取ったセミドキュメンタリーふうな映画である。中心になるのは大統領とその暗殺容疑者リー・ハーヴェイ・オズワルド両方を手当することになったパーク…

20世紀UK女子トラブル文化史〜Carol Dyhouse, Girl Trouble: Panic and Progress in the History of Young Women(『女子の問題:若い女性の歴史におけるパニックと進歩』)

Carol Dyhouse, Girl Trouble: Panic and Progress in the History of Young Women(Zed Books, 2013)[『女子の問題:若い女性の歴史におけるパニックと進歩』]を読んだ。Girl Trouble: Panic and Progress in the History of Young Womenposted with amazlet…

'Aristotelian Traditions and Japan’s Christian Century (1549–1650)'研究会で司会をつとめました

昨日今日と学習院女子大で行われた'Aristotelian Traditions and Japan’s Christian Century (1549–1650)'研究集会に出席し、20日の朝のセッション'Aristotle and Learning in Japan’s Christian Century'前半の司会をつとめました。全然ふだんなじみのない…

アラバマの田舎のスタジオで音楽が生まれる〜『黄金のメロディ マッスル・ショールズ』

『黄金のメロディ マッスル・ショールズ』を見た。 これはアラバマのマッスル・ショールズという田舎町にあるフェイム・スタジオとマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオの歴史を追った音楽ドキュメンタリーである。ネイティヴアメリカンの言葉で「歌う…

第15回歴史コミュニケーション研究会「歴史と現在、その接続可能性 ―産業革命以前のイギリス企業の社会的責任(CSR)の事例から」

この日は歴史コミュニケーション研究会に参加し、ツダってまとめた。 「第15回歴史コミュニケーション研究会:歴史と現在、その接続可能性 ―産業革命以前のイギリス企業の社会的責任(CSR)の事例から」

引きこもりの底力〜ニコラス・フィリップソン『アダム・スミスとその時代』

翻訳チェックを少しだけ手伝った本、ニコラス・フィリップソン『アダム・スミスとその時代』が発行されました。 アダム・スミスとその時代posted with amazlet at 14.06.30ニコラス フィリップソン 白水社 売り上げランキング: 44,333Amazon.co.jpで詳細を見…

絶世の美女がフェミニストになる時〜『パーディタ:メアリ・ロビンソンの生涯』

「情事の終わりが彼女をフェミニストにした」(ポーラ・バーン『パーディタ:メアリ・ロビンソンの生涯』、p. 480) ポーラ・バーン『パーディタ:メアリ・ロビンソンの生涯』桑子利男他訳(作品者、2012)を読んだ。パーディタ――メアリ・ロビンソンの生涯posted…

1シーズンのドラマのダイジェストみたいな出来〜『マンデラ 自由への長い道』

『マンデラ 自由への長い道』を見てきた。ネルソン・マンデラの生涯を描いた伝記ものである。 一言で言うと、演技はいいけど脚本や演出はかなりイマイチだった。主演のイドリス・エルバは素晴らしくて、若い色男から老政治家までを自在に演じ分けて見せる一…

ルネサンスのマインドパレス〜『知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』

先週の科学史学会に行く前に準備としてようやくヒロ・ヒライ、小澤実編『知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュアル・ヒストリー』(中央公論社、2014)を読んだので、メモを簡単に。知のミクロコスモス: 中世・ルネサンスのインテレクチュア…

「良心をつかむ、それには芝居だ」〜『アクト・オブ・キリング』

新宿シネマカリテで『アクト・オブ・キリング』を見た。 既に非常に話題になっているのでとくにもう書くことはないのではないかと思うのだが、まあヘヴィなドキュメンタリー映画だった…(というかヘヴィすぎていろいろ言語化できない)。インドネシアで1965-66…

リヴァー・フェニックスの遺作のひとつ『アメリカン・レガシー』

ユーロスペースで、リヴァー・フェニックスの遺作のひとつ『アメリカン・レガシー』を見た。全然期待していなかったのだが、前の『ダーク・ブラッド』とちょっと似た作風だけど、全然期待していなかったのだが思ったよりは面白かった。 舞台は19世紀のニュー…

日本軍による捕虜虐待の後遺症に苦しむコリン・ファース〜『レイルウェイ 運命の旅路』(ネタバレ)

コリン・ファース主演の『レイルウェイ 運命の旅路』を見た。実話をもとに自由に脚色した作品らしい。これ、全然お客さん入ってなかったし暗い話なのだが、非常におすすめである。 エリック(コリン・ファース)は鉄オタの退役軍人で静かに暮らしているが、あ…

執拗な想起によってのみ、忘却に抗う〜『それでも夜は明ける』(ネタバレあり)

『それでも夜は明ける』を見た。原題はそのものずばりの12 Years a Slave(『奴隷の12年』)なのだが、『あなたを抱きしめる日まで』もこれも邦題センスなさすぎだろ…主演の俳優チウェテル・イジョフォーの名前の表記も間違ったままで広報は直す気全くないみた…

手頃な書物史入門書〜Leslie Howsam, Old Books And New Histories: An Orientation to Studies in Book And Print Culture

Leslie Howsam, Old Books And New Histories: An Orientation to Studies in Book And Print Culture (University of Toronto, 2006)を読んだ。Old Books And New Histories: An Orientation to Studies in Book And Print Cultureposted with amazlet at 1…