英文学

まっとうな悲恋もの〜『あわれ彼女は娼婦』

ジョン・フォード作『あわれ彼女は娼婦』を見てきた。シェイクスピア以外の英国ルネサンス演劇としては比較的頻繁に上演される作品である(2006年の蜷川版は私も見たことある)。栗山民生演出で、主演はアナベラ役を蒼井優、ジョヴァンニ役を浦井健治。 物語は…

神様女神様パティ様〜THE POET SPEAKS

すみだトリフォニーホールで『THE POET SPEAKS』を見てきた。パティ・スミスが来日し、フィリップ・グラスと組んでアレン・ギンズバーグの詩を読む演目を上演するということで、とりあえずパティ・スミスが詩を読むところが見られる機会なんてめったに無いの…

前公演よりかなり良くなった〜Casual Meets Shakespeare 『A Midsummer Night’s Dream』

Casual Meets Shakespeare 『A Midsummer Night’s Dream』を見てきた。 前回、同じプロダクションで『十二夜』を見たのだが、美術はかなり似ている。前回同様、トランプのような白黒に塗り分けられた床にいくつか道具として箱がある程度のシンプルなセットで…

全部夢でできている〜ITCL『テンペスト』

インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドンの『テンペスト』を白百合女子大学で見てきた。ポール・ステッビングズ演出で、毎年日本に来ている劇団である。ほとんど大道具もないシンプルな舞台で、非常に少ない人数でとっかえひっかえいろんな役を…

イザベラと飛翔〜『尺には尺を』(ネタバレあり)

蜷川の遺作となった『尺には尺を』を彩の国さいたま芸術劇場で見てきた。 最初と最後にイザベラ(多部未華子)が鳥を飛ばす場面が付け加えられているのがポイントで、全体的にこの尺尺のイザベラはとてもガッツのある女性である。最後に求婚する公爵(辻萬長)を…

相変わらず台詞回しが…〜板橋演劇センター『ヘンリー八世』

板橋演劇センターの『ヘンリー八世』を見てきた。 とりあえず、かなりダメだったと思う…この演目は以前グローブ座で見たことがあるのだが、基本的に華やかなパジェントをやらないとあまり視覚的に効果のあがらない演目だと思うんだけれども、この上演はセッ…

世界が終わるまではまだ時間がある〜『アルカディア』(ネタバレあり)

シス・カンパニーによる『アルカディア』を見てきた。トム・ストッパードによる1993年の芝居で、英語圏では有名作なのだが、意外なことに日本初演らしい。 この作品は「現在」と「過去」ふたつの時間軸が並行して進む。基盤となる「過去」は19世紀初頭のカン…

アッシュランド(6)オレゴン・シェイクスピア・フェスティバル、バックステージ・ツアー

アッシュランド三日目の午前中、オレゴン・シェイクスピア・フェスティバルのバックステージ・ツアーに参加した。これは二時間ほどのツアーで、オレゴン・シェイクスピア・フェスティバルが持っている3つの劇場、トマス・シアター(一番小さい)、アンガス・ボ…

アッシュランド(7)オレゴン・シェイクスピア・フェスティバル『大いなる遺産』

オレゴン・シェイクスピア・フェスティバルで『大いなる遺産』を見てきた。演出はペニー・メトロプロス。もちろん原作はディケンズで、3時間以上ある大作。 セットは木の段差があるわりとシンプルなステージで、ここにテーブルや椅子などの小道具を出し入れ…

アッシュランド(3)オレゴン・シェイクスピア・フェスティバル『十二夜』

さてさて、待ちに待った今回の取材のメイン、オレゴン・シェイクスピア・フェスティバルへ。合衆国では非常に規模が大きく、最も歴史のあるシェイクスピアまつりである。 桜が咲いているきれいな場所に3つの劇場がある。 最初に見る予定の公演、クリストフ…

『わたしを離さないで』についての連載記事がアップされました

messyでやっている連載に『隠れたるレズビアンと生殖〜『わたしを離さないで』』がアップされました。カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』におけるレズビアンの描写に関するちょっとクィア批評っぽい分析で、小説版のほうについてはネタバレ注意です。こ…

夢か芝居か〜オペラ『クラブマクベス』(少しネタバレあり)

吉祥寺シアターでこんにゃく座のオペラ『クラブマクベス』を見てきた。林光作曲、郄瀬久男台本による『マクベス』の翻案である。 疲れた勤め人の男がひょんなことからマクベスを上演しているクラブに入り込み、いつのまにか芝居の内容に自分を同一化していっ…

とても洗練されたバックステージもの〜『シェイクスピア様ご乱心』(ネタバレあり)

劇団きのこの森による『シェイクスピア様ご乱心』を北池袋新生館シアターで見てきた。個人的な好みだが、ふつうにお芝居としてすごく面白かった上、シェイクスピアリアンとしては笑っちゃうようなネタが満載だし、役者の演技もよく、大満足だった。 シェイク…

第103回古典戯曲を読む会、サラ・ケイン『フェイドラの恋』

第103回古典戯曲を読む会@東京、2016年2月10日(水)サラ・ケイン『フェイドラの恋』に参加した。声に出して皆で戯曲を読むというものである。初めての参加で、夜にバーレスクがあったため途中までの参加になってしまったが、とても面白かった。この戯曲は…

シェイクスピアはこうでなきゃ!〜カクシンハン『ジュリアス・シーザー』(ネタバレあり)

カクシンハンによる『ジュリアス・シーザー』を池袋のシアターグリーンで見てきた。非常に荒削りな演出でまだいくぶん完成してないところもあるのだが、それでも「シェイクスピアはこうでなきゃ!」というようなキレッキレの演出で大変に面白かった。絶対に…

プロットにいろいろ穴が〜『とりあえず、お父さん』

銀河劇場で、アラン・エイクボーン作『とりあえず、お父さん』を見てきた。1965年の芝居である。 登場人物は四人。恋人のジニー(本仮屋ユイカ)のことを疑っているグレッグ(藤原竜也)は、実家に帰ると言って出かけたジニーが置いていった住所に突撃。そこには…

舞台の夢〜ジュリー・テイモア『夏の夜の夢』

ジュリー・テイモアの『夏の夜の夢』を見てきた。2013年にアメリカで上演された舞台を撮影したものである。 テイモアは映画と舞台両方で仕事する演出家なので、この作品はふつうの舞台を撮ったものよりもかなり気合いが入っている。カメラもたくさん使ってい…

全てに必然性のある圧倒的残虐〜サム・メンデス演出、NTライヴ『リア王』(演出ネタバレあり)

NTライヴで『リア王』を見てきた。これ、ライヴでロンドンで見ようとしたらチケットが一瞬で売り切れて行けず、前回の上映の時には在英中で…ということで今回ようやく見ることができたのだが、とにかく素晴らしい上演だった。 演出はサム・メンデス、リア王…

ゲーム・オブ・ザ・ローゼズ〜明治大学シェイクスピアプロジェクト『薔薇戦争』

明治大学シェイクスピアプロジェクト『薔薇戦争』を見てきた。このプロジェクトシリーズを見るのは初めてである。第一部で『ヘンリー六世』三部作、第二部で『リチャード三世』、全部で3時間15分くらいかかるというものだ。 セットは奥に階段があり、ついた…

messy連載二回目、『嵐が丘』について書きました

messyの連載「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」第二回として「腐女子が読む『嵐が丘』〜関係性のセクシーさを求めて」を書きました。『嵐が丘』をどうやらセクシーな小説だと思わない人がいるらしい、という話から「腐女子みたいに読めばいい」という話にな…

色彩の欠如とおっぱいの過剰〜山の手事情社『タイタス・アンドロニカス』

吉祥寺シアターで山の手事情社の『タイタス・アンドロニカス』を見てきた。 冷蔵庫や電子レンジ、テレビが置かれた空間に「タイタスの妻」らしい和服の女性がひとり座り、舞台に出ている人々には見えない狂言回しのような役割をつとめながら話が進むというも…

女の子にも冒険が必要だ〜ナショナル・シアター・ライブ『宝島』

ナショナル・シアター・ライブの『宝島』(Treasure Island)を見てきた。言わずと知れたロバート・ルイス・スティーヴンソンの作品の舞台化で、ブライオニー・ラヴェリー台本、ポリー・フィンドレー演出で昨年末から今年の初めに初演されたものである。 この…

両側の「独白演壇」の使い方がイマイチ〜新宿シアターモリエール『十二夜』

新宿シアターモリエールでCasual Meets Shakespeare Vol.3『十二夜』を見てきた。小さいハコでセットはほとんどなく、道具類もトランプをイメージして白黒にカラーリングした箱を出し入れしたりする程度のシンプルなセットである。着るものもトランプを意識…

どうして夏夢の森はモノクロになってしまうんだろう〜野田秀樹版『真夏の夜の夢』

SPACがフェスティバルトーキョーで上演している野田秀樹版『真夏の夜の夢』をにしすがも創造舎で見てきた。私はこの翻案を数年前に楽塾の上演で見たことがあるので、二回目ということになる。 話の基本的な筋はシェイクスピアからとっているのだが、主役の恋…

どたばた劇と反転〜カクシンハン『じゃじゃ馬ならし』(ネタバレあり)

カクシンハン『じゃじゃ馬ならし』を見てきた。演出はいつもと同じ木村龍之介で、キャタリーナの役は真以美(グルーミオとダブリング)である。ペトルーチオとスライも同じ役者(齋藤穂高)で、これはけっこうよく見かける配役だ。私は『じゃじゃ馬ならし』は正…

イギリス文学史のメモを作ってたはずなのに…

イギリス文学史の授業用メモを作っていたはずなのに、どうしてこうなった。

女たちのやさしさ〜彩の国さいたま芸術劇場『ヴェローナの二紳士』

彩の国さいたま芸術劇場で蜷川オールメール『ヴェローナの二紳士』を見てきた。 オールメールらしくセットや衣装はヨーロッパふうのものだ。大きな鏡を設置した舞台にはいろんな大道具が持ち込まれ、市場になったりお屋敷になったりとっかえひっかえ場面が変…

歌って踊る、川崎市アートセンター『恋の骨折り損』

川崎市アートセンターで河田園子演出『恋の骨折り損』を見てきた。この演目は一度手話の舞台で見たことがあってそれがめちゃめちゃ面白かったのだが、日本語で生で見るのははじめてだと思う。 歌や踊りを取り入れているところはケネス・ブラナー版の『恋の骨…

前半は軽薄、後半はセンチメンタル〜『フォースタス』

池袋の芸劇で鈴木勝秀演出、演劇集団円の『フォースタス』を見てきた。ファウスト伝説を主題とするクリストファー・マーロウの芝居である。 これ、今までに二回、英語で見たことがあって、そのときも現代ではかなり上演が難しい芝居だと思ったのだが、今回も…

女性陣の親密感は良いが…Pカンパニー『お気に召すまま』

西池袋のスタジオPでPカンパニー・P-Quest『お気に召すまま』を見てきた。こじんまりした箱で木下順二訳を使ってやるという試みである。演出じたいは笑いのツボを押さえたもので、そんなに悪くなかった。 全体的に、ロザリンドとシーリアの親密感の表現は大…