両側の「独白演壇」の使い方がイマイチ〜新宿シアターモリエール『十二夜』

 新宿シアターモリエールでCasual Meets Shakespeare Vol.3『十二夜』を見てきた。小さいハコでセットはほとんどなく、道具類もトランプをイメージして白黒にカラーリングした箱を出し入れしたりする程度のシンプルなセットである。着るものもトランプを意識しているようでかなり華やかだ。台本は基本的には『十二夜』だが、かなり台詞を加えて変更している。

 最初は学芸会みたいなノリでいったいどうなることかと思ったが、最後にいくとだんだんよくなってきたと思う。トランプのカードを出すところからはじまり、途中でフェステがいろいろトランプのマジックをやったり、マジックの要素を取り入れているところはちょっと前にパブシアターで見た『悪魔は頓馬』を思わせるところがあり、祝祭的な『十二夜』にふさわしいと思った。フェステだけはヴァイオラが女であることに気付いているらしいという演出や、マライアとフェイビアンが姉弟だという設定なども良かった。

 ただ、舞台の両脇にある独白用の壇の使い方が全然ダメだった。両脇に三角形の小型スロープ台のようなものを置いて、ここに登場人物が乗って話す時は心の声…というふうにしているらしいのだが、別に役者陣はそんなに演技できないわけでもないのに(演技じたいは未熟なとこはあるかもしれないが表情とかは悪くなかった)、わざわざ場面の途中で舞台の脇まで走ってそこでデカい声で内心をわめき散らす必要はない。よく最近の映画はなんでも言葉で説明しすぎだと言うが、それと同じで非常に白けるし、演技で何でも説明する自信が無いのかと思ってしまう。この演出では場面の流れが悪くなるのも非常によくない(この内心独白用の壇に誰かいる時はその場面に出ている他の登場人物は全員静止せねばならない)。さらに途中からこの「上に乗っている人が話す場合は内心」という設定が崩れてしまって、フェステがこの上で台詞を言っているのにどうやら他の人に聞こえているらしい場面とかがあり、一貫性も無い。わざわざうるさい台詞を書き加えてこんなところで浅薄な笑いをとらなくても、いくらでも役者の魅力で表現できることがあるだろうにと思った。

 とはいえ、このシリーズは既に三回目だそうで、また来年もやるかもしれないということなので、今後もっとこのあたりが改善されることを期待したいと思う。