火傷、シェイクスピア、怪しいアニメと映画

 なんと、朝起きて料理していてフライパンで火傷してしまった。病院に行ったところ、たいしたことはないが少し火傷の範囲が広いということで、化膿しないよう水気厳禁を言い渡された。仕方ないので家では左手だけゴム手をはめて料理や入浴をしようと試みたのだが、すっごくやりにくい上、なんか痛くてあまり左手に力が入らないので困っている。と、いうことで、明日以降私に会う方は、ちょっと本人には厳しくても別に構わないので、左手だけには優しくしていただけると幸いです。


 火傷にはとりあえず包帯をしてめげずに出かけることにし、髪を切って図書館を4つ回って、夜はアメリカに行っちゃう友人の送別会(既に一度送別会をやった友達なのだが、別の集合でもう一度やることになった)と他の友人の就職祝いをかねたお祝い会に出席した。お店は下北の南国波家だったのだが、焼きリンゴチーズケーキが大変おいしい!食べ物もおいしかったし、しばらく会えなくなりそうな友人とおしゃべりできてとても楽しかった。


 …で、その行き帰りでRichard BurtのUnspeakable ShaXXXpeares: Queer Theory and American Kiddie Cultureを読んだのだが、その中に読み捨てならん記述があった。

 "[I]n 1995, English translations of the widely popular Japanese comic books Ranma 1/2 and Oh, My Goddess! using Romeo and Juliet and A Midsummer Night's Dream, respectively, appeared" (3)


 拙訳
 「1995年に、それぞれ『ロミオとジュリエット』と『夏の夜の夢』を利用している、日本で広く知られている人気漫画『らんま1/2』と『ああっ女神さまっ』の英訳が出た」



 …えーっ、ほんと!!『ああっ女神さまっ』は全く私は知らんのだが、『らんま1/2』は子供の頃テレビで普通に見てたけど、全然『ロミオとジュリエット』が入っているなんて思わなかったのだが…誰か、『らんま1/2』と『ああっ女神さまっ』とシェイクスピアの関係について何か知っている方がいたらどんどん教えて下さい。よろしくお願いします。ただ、どうもこのリチャード・バートの書き方はどうも怪しくて、80ページ及び263ページの注でこの2本は「アダルト作品」として販売されていたと書いているので、どうもそれはおかしいのではないかと思う。私が『らんま1/2』を見ていたのは10歳くらいの時で、たしか朝の6時半くらいから普通にやってたと思うのだが、そうかあれはアダルト作品だったのか…


 ちなみに、全体的にこのリチャード・バートの著作には不正確なところがいくつかあって、8ページでは映画『クルーレス』のヒロインは"Cher Hamilton"だと書いてあるのだが、これは"Cher Horowitz"の間違いである(←『クルーレス』のヒロインはすごいリッチなヴァレー・ガールで、このホロヴィッツという姓はシェールがいわゆる"Jewish Princess"であることを示している重要なエスニシティの記号だと思うのだが、そんなとこ間違っていいのか…?)。ちなみにバートはこの本でかのコンスタンス・ペンリーなんかをずいぶん引用しているので、あまり厳密さとかは気にしないタイプなのかも…(ペンリーはスラッシュフィクションの研究者。主著は『トンデモ本の世界S』でメタメタに言われているこれ↓で、そんなに悪い本ではないがもうちょっと精密な調査で裏付けるべきではと思うとこも結構ある本である)



 ただ、どうも私はこういうポピュラーカルチャー系の映画を研究している人ってわりと正確さに対して規準が緩いんじゃないかと思うとこがある。例えば、これまた私が最近読んだAnn De Vaney, "Pretty in Pink?: John Hughes Reinscribes Daddy's Girl in Homes and Schools", Sugar, Spice and Everything Nice, 201-216の209ページで、著者のデ・ヴァニーは「(ヒロインの)アンディの母は死んでる」と書いているのだが、これ、映画を注意深く見てるとわかるんだけど、あまりはっきりとは説明されていないのだが本当はアンディの母は死んだんじゃなくて家出して行方不明になったんだと思われる(このあらすじとかこれとかのほうがたぶん正しい)。映画っていうのは小説とかと違って明示的に全てが説明されるわけではないので、どうも映画について書く場合、研究者が勝手に頭の中でいろいろ筋をこしらえちゃうことがあるらしい。これはすごい困った問題だと思うので、今後映画について何か書くときには気をつけねば…と思った。