破壊屋さんに投票してみた

 相変わらず全身ボロボロで新しいエントリを考える元気がないので、この間投票した映画ベストのことでも。


 私がよくチェックしている破壊屋という映画サイトがあって、そこで2009年度上半期ベスト5投票企画をやっていたので、京都に行く前に投票しておいたら昨日結果が出たらしい。


 結果はこちら


 おおかたの予想どおり『グラン・トリノ』と『レスラー』のそろい踏みで、まあたぶん今年の末のベスト10はどこもそうなるんだろうという気がするんだけどなんだかつまらんな…どちらもあまりにも「男の映画」っぽくて食指が動かない。たしかに『グラン・トリノ』はとてもいい映画だったし、『レスラー』はまあ行く気がしないから見てないけどきっと見に行ったらいい映画なんだろうとは思うのだが、どうも私の頭の中では、いくら『グラン・トリノ』や『レスラー』がいい映画であろうと、『恋のミニスカウェポン』のほうがはるかに私の精神衛生にいい影響を及ぼすに違いないという確信があるので、他の人はどうだろうと私はそこまで褒める気おきないのである。今回の投票には入ってないけどChercherz le cinemaさんあたりが考えていることになんとなく近いかも…功成り名遂げたじいさんやおっさんたちが自分を振り返るような映画よりも、若手や女性やとんまな映画オタク…というのはタランティーノとかだが、が勢いだけで作った映画のほうが私は面白いと思うのである(『バニシング・ポイント』を作り替えた作品としては『グラン・トリノ』よりも『デス・プルーフ』のほうが見たい気がする)。


 で、たぶん私が『グラン・トリノ』とかをそこまで褒めたくない理由は、女性の観客はいわゆる「男目線」の映画を見るのにすごく慣れているのに、男性の観客はいわゆる「女目線」の映画を見るのに全然慣れてないという目線の不均衡があるからだということもある(メアリ・アン・ドーンとか呼んでくる?)。例えば、私がふだんよく見ている「音楽に注目して映画を見る」ことをやってる「映画×ロケンロー備忘録」というサイトがあるのだが、ここはとても参考になるサイトなんだけど、いつも不思議に思うのは『マンマ・ミーア!』とかを「男目線がほとんどないのでキツかった」と言っているところである。えーっ、女性の映画好きのほとんどは「女目線がほとんどない」『グラン・トリノ』とか、あるいは『バニシング・ポイント』とか『グッド・ウィル・ハンティング』みたいな映画も普通におもしろいと思って見ることができるのだが(さすがに『40歳の童貞男』とかを面白いと思って見られる女性は少ないかもしれないが、それでも一定数はいる…ここに面白いと思ったのが約一名)、男性はどうも男目線の少ない映画をおもしろいと思って見る機会というか努力というかが少ない気がする(「女の子が死にたくなる前に見ておくべきサバイバルのためのガールズ洋画100選」とか「スカーレット・オハラを全力で擁護する」でも書いたけど、だから女の子映画の金字塔である『風と共に去りぬ』にちっとも動かされない男の人が結構いるわけである)。別にうちら映画好きストレート女が男系の男子に同調して『グラン・トリノ』をベスト1に選ぶことはないんじゃないだろうか(もちろん選んでもいいんだけど、「男目線」映画なんか選ばないっていうのも全然ありだと思う)。



 …で、男系の男子に対抗すべく、イーストウッドには投票しなかった私の投票シートはこちら。

 私の投票シート


1. 『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』
2. 『マンマ・ミーア!
3. 『ミルク』
4. 『リリィ、はちみつ色の秘密
5. 『花の生涯梅蘭芳(メイランファン)〜 』


 日本の映画サイトってわりと「ストレート男趣味」なので(というかどこの国でも映画サイトはストレート男趣味な気もするが)、あえて空気読まずにガールズムービー系で投票してみた。まあ一位の『チャーリー・バートレット』はとにかく傑作だからいいとして(誰も賛成してくれないだろうが)、コリン・ファースのディスコファッションが見所の『マンマ・ミーア!』と、女性が団結してDV男に反対する『リリィ』は女(とたぶんゲイ男性)にしか受けない映画である。『ミルク』はたぶん「自分を振り返る」とかいうのとは対極にある映画で、役者が「どう化けるか」に焦点を置いている上、ミルクという人が理想に燃える超有能な政治家である一方、にっこり笑顔で有権者をだまくらかすある種のデマゴーグでもあり、私生活ではパートナーとうまくいってないダメ男的側面もあるという複雑性をうまく切り取っているのがいいと思う。『花の生涯』は、女装のレオン・ライ対男装のチャン・ツィイーという頭がくらくらするようなキャンプ場面を美しく見せたのと、あと芸道ものとしてとてもよくできているから。『レイチェルの結婚』を入れられなかったのが残念だなー。