『愛を読むひと』(ネタバレ少しあり)

 『愛を読むひと』を見てきた。


 …で、私は原作を読んでいないもんでよくわからないのだが、スティーヴン・ダルドリーらしく非常にきちんと作ってある映画だと思った。ケイト・ウィンズレット(ハンナ役)も頑張ってるし、時系列が飛ぶわりには話も大変すっきりしていてわかりやすい(たぶん原作はもうちょっと入り組んでるのでは…となんとなく想像した)。テーマはナチスドイツの戦争犯罪で全く重い話なのだが…


 で、本筋に関係なくひとつ大変気になったのは、この映画は一応「15歳の少年が35歳くらいの一人暮らしの女が恋愛関係にハマる」ということが話の発端にあるのだが、それって結構違法では…ということである(案の定、ウィキペディアの「ペドフィリア及び未成年者に対する性的虐待の描写がある映画リスト」にも入っている)。今週と先週、This Film is Not Yet Rated(アメリカのレイティングシステムがいかに不公平かを描いた映画)がテレビでやっているのでちょっとレイティングも見てみようと思ったのだが、日本ではPG-12(12歳以下は親の指導が必要)、アメリカではR指定(17歳以下は親の同伴が必要)だった。例えばこれが「15歳の少女が35歳くらいの一人暮らしの男が恋愛関係にハマる」だと全然まともなラブストーリーにならない気がするし(その後「実は男はナチス戦犯で…」とかになるともう『愛の嵐』レベルだ)、レイティングももっと厳しくなるんじゃないかと思うのだが(ただ、今見たらエイドリアン・ラインの『ロリータ』もPG-12だった。『ゴーストワールド』は不明)、アメリカでも成年女子が未成年男子を誘惑する映画に対しては意外に寛容らしい(原作はドイツ)。うーん、そう考えると、この映画は重いテーマを扱っているようで「受け入れやすい」話にする工夫もしている気がする。例えば「自分が15歳の少女だった時に関係を持った男が後でナチス戦犯だとわかった」だと、相手に有利な事実(文字が読めないので収容所の事務に関わる書類作成ができなかったということ)を知っていてもバラすと今度は自分たちの関係がバレて相手が変態扱いされることになりかねないのでなかなかバラそうという気にならないと思うのだが、「自分が15歳の少年だった時に関係を持った女が後でナチス戦犯だとわかった」だと、バラさないほうがいいという外的理由が少なくなるので、主人公が考えねばならないのはハンナが文字が読めないことを恥じているという点だけになる。


 …ちなみに、どことは言わないがこの映画のラブシーンの撮り方は結構ヘンだと思う。ヘンなのは監督の趣味(ゲイ)のせいではないか…と思うのだが(足ばっかり撮ってるフランソワ・トリュフォーとか、やたら女優さんをいじめるヒッチコックとか、監督の趣味って結構映画からわかるもんだ)、ちょっと今後この映画を見る人はラブシーンの撮り方に是非ご注目を…