ジンバブエ(そう、あの通貨暴落と政情不安で有名なジンバブエである)の役者さん二人がバースでやってるシェイクスピアの『ヴェローナの二紳士』のプロダクションがえらく評判がいいということで、今日は観光がてらバースまで出かけてきた。朝6時初、夜1時にロンドン着という超強行日程である。バースといえば温泉に遺跡にチョーサーからオースティンに至る英文学の伝統もあり(『カンタベリ物語』に出てくるバースの女房は5回結婚した女傑である)、見所たくさんの街である。
とりあえず朝5時に起きてパディントン駅に行ったのだが、思ったより早く着いてしまったので、せっかくだからパディントンに会おう!と思った…のだが、なんかどうも見つからなかった。パディントン駅のパディントンって、どこにいるんだ?
で、パディントンに会えないままバースへ向かった。電車の中ではずーっと寝てて(まだ暗いから景色も見えないし)、またたくまに8時半にバースに到着。気温マイナス4度とかいう寒さで、本当は9時にバース修道院が開くまでベンチにでも座って待ってようと思ったのだが、ベンチが凍結していて座れなかった上、あまりの寒さに凍え死にそうになって修道院前のカフェでココアを飲んでしまった。しかし、いくらバカでかいカップで出てくるとはいえ3.5ポンドとは高い…
で、ココアで体をあっためて、9時ジャストにバース修道院へ。
ここは最初はカトリックの修道院だったらしいのだが、宗教改革でアングリカンの大聖堂になったらしい。内陣だけでもとても綺麗な修道院なのだが、11時から塔にのぼるツアーがあるということで、また後で戻ってきてそれに参加することにした。
その後、バースの名の由来でもあり、世界遺産になっているローマンバス遺構へ。遺構は修道院のすぐ隣にあって、修道院前広場から風呂の湯気が見える。
ローマンバスの中、一階の回廊から見た様子。外は寒いが、ここは湯気であったかい。
お風呂の脇から見上げた修道院。
…ところが、上を見上げていると滑ります。
なんかすごい転び方をしている看板だが、石がつるつるになっていてほんとに滑るので注意しないとかなり危険。ここを訪問する予定のあるお年寄り、子供、車いすの方は超注意を!
湯ノ花のようなもので赤くなっている通路。温泉の成分はどういうもんなんだろう?
オーディオガイド(入場料を払えばついてくる。ちょっとコロケーションがあやしい日本語ガイドもあり)によると、このメイン風呂は昔は全天候型で屋根もあったらしいのだが、今は残ってないそうだ。古代ローマ人はあんなに技術をたくさん持っていた上、ギリシャ人の残した科学的遺産も受け継いでいたはずなのに、温泉の仕組みについては全く知識がなく、地面からお湯が沸き出すのは神のみわざを見なされていたらしい。この温泉もミネルヴァに奉献されていたそうで、捧げものとか神への願いを書いた紙、あと呪い(!)なんかもあった。こういう考古学的遺物や史料は全部附属博物館で展示されており、呪いの日付が私の誕生日と同じく4/12になっているものがあってなんか嬉しかった(←うーん、ここで嬉しいのはおかしいな…まあ、今とは暦法がちょっと違うはずだけど)。
メイン風呂の他にサウナや冷水プールなどの遺構も残っており、ここは屋根もまだある。
お金が投げ入れられた泉。昔からこういう泉に神への供物を捧げる習慣があったそうな。
博物館の中、通路や入り口の遺構。中があたたかく水も豊富なので、草やコケがたくさんはえている。
オーディオガイドによると、古代ローマの風呂は基本的に日本の江戸時代と同じく全裸で混浴だったそうである。ハドリアヌス帝の時代以降、混浴禁止令が結構出たのだが、建前だけであまりちゃんと守られていなかったそうだ。
このローマンバス遺構はとてもよく保存されており、展示やオーディオガイドなんかも充実していてすごく面白かった。私が風呂好きなせいかもしれないが、古代ローマ人と一緒に風呂で世間話をしているような楽しい気分を味わえる遺跡である。
ローマンバスに付属しているパンプルームという昔の社交場(今はレストランになっている)をちょっと見た後、ギルドホールマーケット、ヴィクトリアアートギャラリーなどを散策。
ヴィクトリアアートギャラリー(入場無料)。グレイソン・ペリーが監修した展覧会がやってた。
アートギャラリー内の寄付をつのるからくり人形。お金を入れると画家が絵を描く動きをしてくれるらしい。これなら寄付が集まりそうな気がする。
…さて、10時半すぎたので、5ポンドの塔ツアーへ行くため修道院へ。
ちょっとまだ時間があるので、修道院博物館を見学。
教区の寄付を記録した記録簿。歴史学者にはたまらん内容であると思われる。
さて、バース修道院塔ツアー。100段以上あるかなり急な階段をのぼって塔の上まで行く。
こちらが塔の鐘鳴室(ringing chamber)。
…どういう仕組みで鳴らしてるのか興味津々だったのだが、ツアー係の人がすごい早口(かつ、ちょっと訛りがあった)であまりよくわからず…どうもつり下がってるヒモをねじ回しみたいなので調整してひっぱって音を出すらしいのだが、それ以上はわからず…
時計室へつながる暗い道。
時計は教区民の寄付などによっていろいろ細心の注意を払って維持されているらしい。
鐘楼室(bell chamber)。
さっきの鐘鳴室でヒモをひっぱるとここの鐘が鳴るようだ。
50分で5ポンドのツアーだったのだが、こんなふうにいろいろ大聖堂の裏側を見るのはめったに得られない機会なので、払っただけの価値はあったと思う。足が丈夫な人は是非チャレンジを…
さて、お昼になったので、バース名物サリー・ラン・バンを食べようと、17世紀からあるティールーム、サリー・ランズへ。
サリー・ランス外見。修道院脇の小道にある。
地下はキッチン博物館になっている。ちょっと安っぽいが、無料にしては気合い入った作り。
ディケンズご愛用の看板。
なんと、私が通された部屋はジェーン・オースティン・ルーム。
部屋の感じ。雰囲気はいいのだが、光の具合がまぶしすぎる…カーテンが必要な感じ。
ランチ。サリー・ラン・バン(ふっくら丸パンみたいなやつ)のサーモンホットサンドと、サリー・ランオリジナルブレンドの紅茶。
ちょっと高かったのだが、イギリスのサンドイッチにしては珍しいまともな味。クリスプが自家製なのと、野菜がきちんとついているのも素晴らしい(日本なら当たり前の気もするが)。
ちなみにサリー・ラン・バンを買って帰ってきてみたのだが、見かけはどうってことない丸パン。
…なんか、ガイドブックには「お菓子」と書いてあったのだが、これってお菓子じゃなくパンでは…パンとしてはおいしいし、薄い皮にふっくら中身で昔ながらの給食のパンを思わせる懐かしい感じなのだが、名物お菓子と言われると?という感じ。
…さて、これでバースの午前中が終了なのだが、午後はまだ写真もいっぱいあるし、いろいろなことにチャレンジしたので、残りは明日。