あまりのおもしろさにびっくり、ソーホー座『ベティ・ボーンとマーク・レイヴンヒル――三幕の人生』

 ソーホー座で『ベティ・ボーンとマーク・レイヴンヒル――三幕の人生』の再演を見てきた。


 これは9月の公演に行きたかったんだけど行けなくて、再演ということで初日に行ってきたのだが、とにかくすんごく面白かった。ロンドンとニューヨークに住んでいる人はみたほうがいいと思う。不覚にもベティが歌を歌うとこで泣きそうになってしまい、あやうくこらえたくらいすごくよかった。


 これは一種のドキュメンタリー演劇で、ベティ・ボーンというドラァグクィーンのエンターテイナーの人生を舞台上で劇作家がインタビューするという内容なのだが(行ったインタビューをもとに再構成して、ある程度話す内容を決めて舞台に出て二人でやりとりする)、とにかくこのベティのキャラがすごくたっているし話も面白いので、ベティを見てるだけでチケット代の元を取った気になれる。

 ベティはイギリスのワーキングクラスの家庭に生まれて俳優になったのだが、ロンドンで最初期のゲイリブに関わり、ゲイコミューンを作って暮らしていたらしい。コミューンが解散した後はドラァグクィーンのスターとして世界中をまわり、エイズの危機などをのりこえて現在は俳優をやっているのだそうだ。

 インタビューの際には昔撮った写真なんかを使いながら話をすすめていくのだが、それを見て思ったのは、ライフヒストリーっていうのは工夫次第でこんなに面白くなるんだなーということである。『ムネモパーク』もそうだったのだが、やっぱりキャラが立っている人というのは見ているだけで面白い。しかもベティはエンターテイナーで、自分のキャラについてさらに自覚的で歌とかジョークのサービスも手慣れたもんだから、なんというか見ていて単に「ライフヒストリーが面白い」っていうのだけじゃなく「エンターテイナーは自分を演じている時でもいつもエンターテイナーなんだなー」みたいな虚実のあわいをつくおもしろさもくっついて来て、見ていて飽きない。

 あと、ロンドンの初期のゲイリブの話ということで、実は結構歴史的価値も高い情報がいっぱい入ってるんじゃないかと思う。3ポンドだったのでプレイテキストも買ってきたのだが、このテキストは前に上演したもっと長いバージョンのやつで、いろいろ貴重な情報が満載な気がする。


 …ちょっと面白すぎてあまり分析的に見ることができなかったのだが、もうちょっと冷静になればまたいろいろ分析すべきところが出てくるかも。まあでも今のところ、たぶんロンドンに来てから最高に面白かった芝居かな…