映画サービスデー三本目、『セラフィーヌの庭』。
これは第一次世界大戦後に活躍したフランスの女性画家、セラフィーヌ・ルイの伝記ものである。セラフィーヌはいわゆる素朴派で絵画教育を受けたことがなく、自己流で絵を描いていたが、最後は精神病にかかって病院で亡くなった。いわゆるアウトサイダー・アーティストである。
セラフィーヌ役のヨランド・モローが大変上手で、地味な映画でそんなに起伏があるわけでもないのだがこの人の芝居を見ているだけで二時間全然飽きない。この映画のセラフィーヌは純粋というにはちょっと狂気がかっている、変わり者の田舎娘がそのまんまばあちゃんになったような感じですごくリアルだ。こういうばあちゃん、どの田舎にも一人くらいはいると思う。
他の役者さんたちも頑張っていると思う。セラフィーヌを見いだす画商ウーデ(ウルリッヒ・トゥクール)はどうやらゲイなのだが、それを世間知らずで男女のことすらあまりよく知らないらしいセラフィーヌにうまく伝えられなくて「わかるよね?」と言うところとか、役者さんの間が絶妙だと思った。
そんなわけでこれは役者の芝居と、あとはセラフィーヌの独特の絵を楽しむ作品だと思う。しかしあの画面全体が植物で埋め尽くされた絵はほんとにこれぞアウトサイダー・アートって感じだなぁ…いっぺん生で見てみたいものだが。
というわけで、アウトサイダー・アートの流行についてはちょっと思うところがないでもないのだが、この映画はとくに鼻につくところもなくとてもよくできていると思った。美術史に興味のある方には非常におすすめだと思う。