人間には無駄なものが必要〜『ハロルドとモード』

  1972年の映画『ハロルドとモード』のリバイバル上映を見た。

 これは自殺ごっこが趣味の19歳の青年ハロルドが79歳の過激なヒッピーばあさんであるモードと出会い、愛し合うようになるという話である。監督は『チャンス』のハル・アシュビーで、カルトムービーとして有名な作品。とにかく評判に違わぬいい映画だった。

 ハロルドが最初にモードの部屋に招かれた時に、モードが自分の部屋にある蒐集品を見せて「人間には無駄なものも必要」だと言うのだが、私がこの映画で一番気に入ったのはこの部分だったなぁ…モードはワケのわかんない「無駄な」ものをいっぱい持っているのだが、それこそが楽しくて充実した暮らしなんだということがことあるごとにほのめかされていたと思う(台詞でももう一、二回出てきていた気がする)。一方でモードはナチスの収容所にいたことがあるというのもちらっとほのめかされているのだが、無駄なものは全部なくしちゃおうというのがナチスだ。この映画にはいろいろなメッセージが含まれているのだが、そのうち大事なメッセージのひとつは人間には絶対に無駄が必要なんだ、無駄を許さない社会なんていうのはロクなものじゃないということなんじゃないかと思う。

 あとはまあこの映画は非常に素晴らしい童貞映画であった…のだが、私は童貞であったことが一度もないこともあり、どの程度童貞映画として人におすすめできるのかイマイチわからないところがあるので、そのへんについてはちょっと自信ない。