ランナウェイズ以前の女性ロックバンドを捜せ!

 …えーっと、世界で初めてメジャーでヒットをとばした女ロックバンドはランナウェイズってことになってるんだけど、ランナウェイズ以前にも実はオールガールロックバンド(メンバーが全員女で、自分で楽器を演奏する)はいた。と、いうわけで、本日はそういうバンドの音源をYouTubeで探してどんどん貼って、かつ参考になりそうな別の音源と比較しようと思う。


 まず、世界で初めてメジャーレーベルと契約したオールガールロックバンド、ゴールディ&ジンジャーブレッズ。アメリカで1963年にデビューしたらしい。ニューヨークで活躍してて、アンディ・ウォーホルがらみだとか。

 ヴォーカルがタンバリン持ってるのがなんかアレだが、実はこの曲、実はブリティッシュ・インヴェイジョン一派でとても人気のあったハーマンズ・ハーミッツの1965年の曲"Can't You Hear My Heatbeat"のカヴァーで、ハーマンズ・ハーミッツのほうなんかヴォーカルはタンバリンすら持ってなくて拍手なので…

 オリジナルとカヴァーを聞き比べてわかるのは、格段にゴールディ&ジンジャーブレッズのカヴァーのほうがガールズグループ(当時人気だった女だけのヴォーカルグループ)っぽいこと。たとえば1965年のスプリームズの"Where Did Our Love Go?"と聞き比べると…

 ゆっくりめで上半身横揺れ系のビートの取り方とかが似てるでしょ?やっぱり当時人気があってかつ女ロックバンドよりも受け入れやすかったのであろうガールズグループっぽく売るというのが商業的戦略だったんだろうか。他の曲も下みたいな感じで、音だけだとモータウンだとか言われても信じちゃいそう。





 お次はイギリスのリヴァーバーズ。1962年にリヴァプールで結成、ドイツで売れたっていうからビートルズと完全にタメですよ。

 この動画を見るとわかるように、音も演奏スタイルも完全にマージービート。かなりダミ声の中性的なヴォーカルで、ガールズグループ寄りのアメリカのゴールディ&ジンジャーブレッズとは全然違う感じ。

 なお、このバンドはチャック・ベリーの有名曲"Too Much Monkey Business"をカヴァーしてる(最初のほうは"Johnny B. Goode"っぽいが)。

 こっちがチャックのオリジナル。

 ご同輩のビートルズの有名なカヴァーヴァージョン。

カントリーっぽくて焦らずクールなチャックのオリジナルに比べるとかなりビートルズに近いと思うのだが、それにしてもイントロから結構ギターがキてて結構ワイルドなカヴァーじゃない?
 なお、リヴァーバーズの前年にホリーズが、その後キンクスもカヴァーしてる。


 ホリーズは途中ウケる。キンクスは…こいつらほんとおかしいよね?!?!(←褒めてるつもり)


 お次は1966年にアメリカで結成されたハートビーツ。

 ライチャスブラザーズのカヴァーらしいのだが、オリジナルはこちら。

 キングズメンもカヴァーしてる。

 …しかし、実力派ブルーアイドソウルのライチャスブラザーズや元祖ガレージロックバンドのキングズメンよりもサウンド的にハートビーツに近いのは軽妙でしゃれたモンキーズじゃない?


 さて、60年代も後半になるとサウンドがガラリと変わってどんどんサイケかつ複雑になってくる。


 まずはアメリカで1968年頃から活躍したサイケデリックガレージバンド、フェミニン・コンプレックス。

 …これはなんか90年代のオルタナみたいで新しくないか?!サウンド的にはジェファーソン・エアプレインに近いかもしれないけど声なら断然フェミニン・コンプレックスのほうが今風だよね? むしろ2000年代のロングブロンディーズとかに近くない?



 お次は1967年結成のエイス・オヴ・カップス。

 非常に60年代末のアメリカ西海岸のロックバンドらしい音。ジミヘンの前座だったらしいのだが、たしかにちょっとポップにしたジミヘンって感じもするかな(技術的なことはともかく)。


 …さて、お次は1968年にデビューしてニューハンプシャーの地元
では人気があったらしいシャグズ…なのだが、ちょっと覚悟してから聞いて欲しい。


 …最初、昔のレコードから音をとったせいで何かタイミングがずれてるのかと思ったのだがそうではないらしい。カート・コバーンはこのバンドのファンだったとか。いやこいつらすごいよ!!フランク・ザッパとスリッツとハザーズを足して演奏技術だけ10で割った感じ!



 …さて、あまりにも革新的なバンドの後、最後はすばらしいバンドをということで、史上二番目にメジャーレーベールと契約したアメリカのハードロックバンド、ファニー。69年にデビューしたらしい。


 …いやこれはカッコいい。映像が劣化しているのが残念だが、歌も演奏もうまいし、サウンドもハードでほどよく個性的だけどポップだし、素晴らしいと思う。ピアノを上手く使った音作りはローリング・ストーンズを思わせるし、ヴォーカルスタイルは72年デビューのハートのアン・ウィルソンの先駆だよね。

 と、いうことで、ランナウェイズより前にもいいオールガールロックバンドは結構いるのだが、ジャズ系やシンガーソングライター系、ソロのロック歌手なんかにも女性で活躍するミュージシャンはいたので、また気が向いたらYouTube貼ります。