ディータ・フォン・ティーズ in ロンドン・エロティカ2010〜アートでアンダーグラウンドなこじんまりした催しなのかと思ったら世界最大規模の博覧会だった…

 えーっと、昨日ディータ・フォン・ティーズのバーレスクショーを見てきたんですが、会場の雰囲気が予想とあまりにも違っててびっくり!

 なんかロンドンエロティカ2010というのは「ショーをやるステージの他、展示とショップがいくつかあります」という話だったので、まあ劇場やクラブとかギャラリーが組んでいろんなところで散発的にやるアートでアンダーグラウンドなこじんまりした感じの催しなんだろうと思っていた。フェティッシュショーやストリップの劇場だっていうから気合い入れて着物を着込んで調べた住所に到着したら、なぜかケンジントンオリンピア国際展示場が…

 中に入ってみたところ、国際展示場でやってるデザインフェスタを思いっきりセクシーにしたみたいな感じで、ものすごい数のフェティッシュショップ(コルセットやセクシーなドレスを売ってる店が多い)とこれまたエロティックなアート作品(50年代風なバーレスクモデルの写真とか、裸体や性器をモチーフにしたサイケデリックなオブジェとか)の展示が…かなりびびってとりあえずもらったカタログを確認したところ、なんとロンドンエロティカっていうのはロンドン市民を中心に75000人の人が見に来る「世界最大規模のアダルトライフスタイルショー」で、お店、アート作品展示、バーレスクを中心としたパフォーマンスからなる博覧会だとか…えええええっ!しらんかった!

 場内の雰囲気はずいぶん健康的でオープンな感じで、お客さんの半分はフツーの格好した仕事帰りみたいな人たち(退職した老夫婦みたいな感じのお客さんも)。カップルで来ている人も大変多い。一方もう半分はここぞとばかりキメキメのファッションの若者たちで、コルセットをしめたゴスロリとか、50年代のグラマーガール(←よくわからんが男もいたのかも)とか、レザーを着込んだゲイとか、今すぐドラァグキングショーに出演できそうなかっこいいダイクとか、そんな感じ。着物でも全然違和感ナシ。

 そんなわけでびっくりしつつ奥の舞台に向かったところ、ちょうどバーレスクショーの最中で、ショーガールが火を噴くパフォーマンスをしててびっくり。これはスゴい!

 で、お目当てはディータのバーレスクショーなのでステージ側のいい席を陣取ってずーっと待ってたのだが、開始直前までには老若男女すごい数の人が集まってきて、何層も立ち見が出るしまつ。髪型をバングズ(前髪を切りそろえた髪型。50年代の伝説のピンナップガール、ベティ・ペイジのトレードマークだった)やビーハイヴ(頭の上でかもじなどを使ってでっかく髪をふくらませるヘアスタイル。60年代に流行)にしたブルネットの若い女性がたくさんいて、ファン層がわかる感じ。

 で、三十分遅れでパフォーマンスが始まったのだが、内容は大変よかった。阿片窟というタイトルの15分少々のダンスルーティンで、ギンギンギラギラの衣装をまとって豪奢なベッドに寝そべる白人のディータに中国系のメイドさんが阿片を渡し、阿片をすった女主人がセクシーな夢を見る…といういかにもわざとらしいあえてステレオタイプをねらった感じのオリエンタリズム演出が用いられており、非常にキャンプな感じ。

 で、ディータのパフォーマンスを見て非常にびっくりしたのだが、この人コルセット(コルセットの下にストリッパーがつけるちっちゃくて薄いブラとパンツみたいなのをつけているので完全に全裸にはならない)もハイヒールも脱いじゃっても全然ボディラインがかわらないのである。コルセットっちゅうのはウエストをしめるためのものであり、ハイヒールっていうのはつま先を支えるためのものだと思うのだが…しかし、ハイヒールなしでもパフォーマンスの間中ずーっとつま先立ちであんなに柔軟でしっかりタイミングのとれた動きをキープできるとは全く驚いた。いったいどんな筋トレをしてるんだか(ベリーダンスとかはそういう訓練をするんだっけ?)。あと途中で大きな扇で身体を隠しながら踊るところもあるのだが、そこも身体の動きのコントロールが完璧で感心した。よくあんな姿勢であんなデカい小道具を持ったまんま柔軟に動けるなと…

 ただ、困ったことに舞台設備がねぇ…展示場に特設の舞台を設置してるだけなので、音響はでかけりゃいいみたいな感じだしヘンに反響してかなり音が悪い。照明も暗くできないので繊細な色の使い分けとかができず、スモークの効果も半減。あと、客席と舞台がかなりフラットにつながっている感じになってしまっているのもよくない。豪奢なセットに奇抜な小道具を使うこの手のショーは一種のファンタジーだと思うし、ショー全体の構成もまず舞台に現実とはかけ離れたファンタジーの世界があって奥にパフォーマーがおり、そこからパフォーマーが少しずつ観客に近づいていくことでファンタジー世界に客が近づくっていう形になっているのに、最初から舞台と客席が近いと効果が半減すると思う。

 と、いうことで、パフォーマンス自体は全然いやらしくなく上品なお色気に富んでいて、ダンス、とくにキャンプで派手でちょっと滑稽なタイプのショーが好きな人には非常におすすできると思うのだが、もっと照明・音響がいい劇場かクラブでやらないとダメなんじゃないかと思った。国際展示場ではまともなせりとか吊り物も使えないしねぇ…


 ディータはメインステージでのパフォーマンスだったのだが、その後二階のフィーチャーステージで男性ストリッパーによるバーレスクパフォーマンスがありますという話だったので、『フル・モンティ』を思い出して話の種に見に行ってみた(博覧会場のチケットがあれば全部のショーを見ることができる)。これはなんかものすごく滑稽な感じで大爆笑したのだが、全然セクシーとかは思わなかったなぁ…こちらも全裸には至らず、映画なんかのパロディを取り入れて面白おかしく踊る"tease"な感じの出し物だったんだけど、色っぽいかと言えば全然…隣の買い物帰りみたいな格好のおばさまも含めてイギリスの女子はみんな筋骨隆々の刺青にキャーキャー言っていたのだが、あれってセクシーだと思ってるから喜ぶのかな、それとも私と同じで笑えるから面白がってるのかな?最初の演目は『マトリックス』のパロディでサングラスに黒服の男三人が後ろに反ったり跳ねたりして踊るパフォーマンス、次は士官服を着たリチャード・ギア風のダンサーのストリップティーズでたぶん『愛と青春の旅立ち』のパロディ、最後のやつが一番すごくて、両手に燃えさかる松明を持ったダンサーたちがものすごい速さで踊るというかなりダンス技術が必要そうなパフォーマンスだった。
 
 で、この男性ダンサーの踊りを見て思ったのは、露出度が高いとダンスのうまいへたがバレやすいということである!派手な衣装とかに目がいかず、ボディラインがはっきり出て筋肉の動きに目がいってしまうので、ちょっと動きがズレたりすると非常に目立つ。あと、筋骨隆々の男性ダンサーだとしなやかで柔軟な動きが映えないことが多いので、エネルギッシュで速い動きばかり使っていると単調になることもあるなと思った。とくに最初のマトリックスのルーティンでは左端のダンサーだけもたついてて気になったなー。踊り自体がすごくうまいダンサーじゃないと、見ててもそんなに楽しくないかも。

 と、いうことで、私の感想としては男性ストリップティーズはいっぺん見たらもう見なくてもいい感じ、気合いの入ったバーレスクショーはもう一度設備のいいところで見たい感じだった。来年もディータとかそのレベルのバーレスクアーティストがくるんならもういっぺんこの催しに来てもいいのだが、ちょっと設備が悪いよなぁ…


 なお、Ustreamでカタログを見せながら催し概要を詳しく紹介したので、ご興味のある方はこちらをどうぞ。ただしかなり刺激の強い内容が含まれ、また現在も実施中のイベントについてカタログを使って解説しているので、コミュニティメンバーのみの公開にしてます。