ゲッコー再登場、しかし結末がいくらなんでも…〜『ウォール・ストリート』

 『ウォール街』の続編、『ウォール・ストリート』を見てきた。字幕なしだと金融用語がちょっときつかったのだが、まあたぶん日本語で説明されてもよくわからないと思うのでそのへんは気にしないことにして…きっと日本上陸後に経済学者とかが映画評書くだろうし。

 『ウォール・ストリート』は前作で刑務所に入ったゴードン・ゲッコーが2001年に出所するところから始まり、メインの話は2008年の金融危機。ゲッコーの疎遠になっていた娘ウィニーと婚約した若手トレーダーのジェイク(シャイア・ラブーフ)は未来の義父に魅せられて…というあらすじ。

 とにかく相変わらずマイケル・ダグラスがゲッコーの役柄にぴったりはまっているのには驚いた。もう20年もたっているのに役作りのカンが全然衰えてないみたいで、ちゃんとゲッコーの二十年後の姿に見える。ゴードン・ゲッコーといえばおそらくアメリカ映画の悪役としては『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士と並ぶカリスマと知名度を誇っていると思うのだが、アンソニー・ホプキンズが年取って弱っちゃったのに比べてダグラスは一作目とほとんど同じエネルギーで芝居してる感じがする。まあ、二十年たって老けたという設定もあるのだろうが…シャイア・ラブーフは頑張っているとは思うし弱々しいところが可愛いとも言えるのだが、やっぱりダグラスに比べると若造だなぁ。

 しかし、脚本と編集はちょっとどうなのと思うところも…脚本については後半あたりまではかなり良かったと思うのだが、あのラストは一体何なんだよ!?単なるハリウッドらしいご都合主義的ご家族主義なのか、それとも「金さえあれば家族は買える」あるいは「家族というのはこれくらいヒドいものである」という隠れメッセージなのか(←そういうことではないと思うのだが)、まあとってつけたようなダメなラストである。ジョナサン・デミがすっかり年取った後に『レイチェルの結婚』みたいなシビアで若々しい家族映画を撮ったことを考えると、オリヴァー・ストーンももっとデミに倣って辛辣さを忘れないようにすべきだったんじゃないだろうか…この映画は金融危機の責任を問うという非常に志の高い続編で、他の部分はとてもよく考えて作ってあるのに、あのラストで全部台無しじゃない?

 あと、編集がとにかく凝っててちょっと凝りすぎと思うところもあった。ストーンがけれん味のある演出が好きなのはわかっていることだと思うのだが、スプリットスクリーンの多用とか、台詞や音をいくつも重ねる演出とか、めまぐるしいカット割り(とくに地下鉄の場面など)、最初はいいけどだんだん最後のほうで飽きてくる。ただこれは好みの問題でもある気がするので、飽きない人もいるかも。

 まあ欠点はあるし好みもあるが、最後の十分を除けばだいたい面白いと思うし、経済関係者とゲッコーの悪役ぶりをもう一度見たいという人にはおすすめできると思う。