新春観劇第一弾RSC『冬物語』、と思いきや、途中でセットが半壊して大変なことに

 新春観劇第一弾はロマンティックで冬らしいものをということで、RSCの『冬物語』を見てきた。

 本でいっぱいの本棚を舞台の右と左に配置して吊り物も多用する凝ったセットは見た目も面白いし、役者陣も頑張ってたのだが、なんと途中で左側の本棚が半壊して上演が一時中断。迫力が半減してどうも楽しめなかったなぁ…

 ↓半壊した本棚と、上演途中なのにばらばらに散らばった本を前にすっかりお手上げの大道具さん。

 よりによって本棚が半分倒れてしまったのは前半のクライマックスであるシチリア王妃ハーマイオニの裁判の場面で、忠実な侍女ポーライナが不倫と謀反の疑いをかけられた王妃のために熱弁をふるって弁護するという緊張感あふれる場面。客のほとんどはポーライナ(アフリカンのノーマ・ダメズウェニとかいう発音の難しい名前の女優さんで、なかなか上手かった)に釘付けで、もともと傾き気味で設置してあった本棚が半分倒れたのにも気づかなかったと思うのだが(隣の人が「いつ倒れたの?!全然気づかなかった」と言ってたしうちも気付かなかった)、台詞を遮るように突然大道具さんが舞台に出てきて「セットに問題が生じました!危険なので一時中断します」と発言。役者がはけた直後に事態はさらに悪化、本がどんどん床に転落してお客さんたちがカメラ付き携帯を取り出す騒ぎに。

 大道具さんが頑張ってなんとか本棚を元の傾きまで直し(直った瞬間客席から拍手が)、本は床に散らばったままで中断したところから舞台を再開。役者の頑張りもあってなんとか元に戻ったのはいいのだが、なんとどうやら本来は第一部の最後、王妃が亡くなって裁判が悲劇的に終わる場面で両側の本棚が倒れて本がバラバラに散らばるという演出だったらしいの!一応、最後に両側とも本棚を倒して右側の本棚から本を落としたのだが、左側のほうは既に半分倒れて本はあらかた落下してしまった後だったので、演出効果が甚だしく失われた。

 後半は陽気な村祭りの場面とかが主で心機一転って感じだったし、最後のハーマイオニの「彫像」が動く場面とかはさすがだなと思ったのだが、前半がセット不備はやはりちょっと迫力がそがれたなぁ…役者がケガをしなかったのが幸いだったが。

 まあでもセットに不備さえおこらなければたぶん楽しめる演出だったんじゃないかと思う。前半のシチリア宮廷はシチリアとは思えないほど冷たい感じで(去年シチリアに行って、『冬物語』の舞台はこんなに明るい国なのかとびっくりしたのだがそういう感じではなかった)、単なる良き家庭婦人ではなく、政治的責任感に富んでいて外交的配慮もある王妃ハーマイオニと、嫉妬に狂って暴君と化し王としての責任を忘れた王レオンティーズの対比が良く出ている(シチリア王夫妻はすごく上手かった。レオンティーズの台詞回しはナチュラリスティックすぎて私は好みではないが、まあ味はある)。アポロの神託が下り、すったもんだの末にハーマイオニが「死亡」(ほんとは死んでないのだが)するまでのところは、王たることを忘れた王に対して神の怒りが下るという感じでとても面白かった。
 後半のボヘミアの田舎(散らばった本などをそのまま草とか丘みたいなものに見立てて農村風景を演出)はのどかで陽気な感じで、前半との対比が非常にはっきりしている。村祭りのバカ踊りの振り付けとかはちょっとどうかと思うところもあったのだが…

 なお、ラウンドハウス座のRSCシリーズでは『ロミオとジュリエット』も今晩千秋楽だったのだが、チケットが全部売り切れて当日券すらナシ、結局見られず。『お気に召すまま』はなんとかチケットとれたのだが、他の演目は見られるかなぁ…どれも結構売れちゃってるみたいだけど。