ヴィクトリア&アルバート博物館「ディアギレフとバレエ・リュスの黄金時代」展

 ヴィクトリア&アルバート博物館で「ディアギレフとバレエ・リュスの黄金時代」展を見てきた。会期末ということで大混雑、入場は一時間待ち。

 展示品は舞台の書き割りやミニ復元模型などバレエ・リュスの美術関係資料、舞台衣装、文字資料の他、オリジナルの振り付けを再現したバレエの映像など、どれも興味深いものばかりで非常に面白かった。とくに『火の鳥』のオリジナルの書き割りが一枚まるまる残っているのはすごい。この書き割りはV&A博物館が持っている最も大きい紙の一枚絵資料らしいのだが、褪色が激しいものの当時の舞台の雰囲気は非常によくわかる。

 展示されている復元模型を見ると、大道具をたくさん置いて舞台の奥行きを出すよりは一枚ペラペラの書き割りを使うタイプの舞台(大道具があっても一個か二個やたら目立つヘンなものを置くとか)がかなりあったようなのだが、これはストレートプレイと違って大道具でバレエダンサーが動きづらくなるのを防ぐためなのかな?しかし、展示を見た感じではバレエ・リュスの公演は20世紀初めとしては非常にアヴァンギャルドで物議を醸すようなものであっただろうと思われるので、現代風な振り付けがこういうペラっとした舞台装置とどのようにマッチしたのかが非常に気になる。看板ダンサーだったニジンスキーのダンス映像が残ってないのはたぶん舞台芸術研究家やバレエ愛好家には痛いよねぇ…なお、ニジンスキーと覚しきダンサーが牧神の格好をした画像も展示してあったのだが、動いていなくても十分にスキャンダラスであった。動いてない状態でもこの色気で、自慰を思わせる振り付けだったらたぶん20世紀初頭の人はすごく怒ったのであろう。


 と、いうことで、バレエのことはよく知らないけど展示品の質については初心者でも申し分なく楽しめる知的好奇心をそそる内容だったと思うのだが、多数の展示品を効率よく配置しようとしてかなり見づらくなっている気もした。狭いところを壁で仕切ったりしてたくさん展示品を置く展示スタイルはちょっとよくないな…あれでは人が流れないから、たくさん客が来たら入場制限するほかない。あと、映像ブースと物品展示ブースが近すぎて、展示品をよく見ようと近づくと見ている人の影が映像にうつってしまうというどうしようもない展示もあったのであれは非常によろしくない。ただ、衣装をくるくる回る展示台にのせて後ろからも見れるようにしていたのは良かったし、椅子なんかを積み上げた楽屋風な展示もオシャレだった。

 昔の振り付けを復元した映像は、『春の祭典』の生贄の乙女の踊り(だと思う)とかは面白かったのだが、同じ『春の祭典』の別の場面をおそらく別のカンパニーが上演した時の映像で、予算がなかったのか書き割りと衣装が異常に安っぽく「間違ったエキゾティシズム」丸出しでまるっきり学芸会みたいになっているものがあったのには笑った。復元すんならちょっとは予算かけようや!

 この展示は明日までなのだが、舞台芸術に興味がある方には本当にオススメ。最終日は間違いなく混むので、早い時間に行ったほうがいいと思う。

おまけ:V&Aの日本コーナーで根付けに群がるヨーロッパの人々

 根付けは少なくともイギリスではかなり人気があるみたい。大英博物館にも根付け専門のブースがあって、カタログも売っている。

おまけ2:V&Aの日本コーナーみやげ、招き猫

おまけ3:V&A側のケンジントンクレープカフェのチョコナッツクリームクレープ。

 友人に教わった店でV&Aに行くと必ずここで昼を食べていたのだが、なんか以前のきったないボロい店が突然大きい綺麗な店になっていたのでびっくり。しかし改装は失敗では…以前は小さい店がぎゅうぎゅうということで広告効果があったと思うのだが、今回行くと前にあったような「街の老舗」ふうの風情がない上、デカくなったぶんお客さんがちょっとしかいないみたいに見えてはやってないように見える。その上値上げしたみたい。クレープは相変わらずもちもちしていてうまいんだけど、チョコレートにして失敗したかも…このもちもち感は食事クレープ向けだと思ったし、チョコレートがたっぷりすぎて最初はうまいんだけど途中からくどかった。次は食事クレープにしよう。