「本と娼婦はベッドに連れ込むことができる」〜Naked Girls Reading(ネイキッドガールズリーディング)、全裸の女性が朗読をするパフォーマンスアート

 今ロンドンのアンダーグラウンドシーンで話題のバーレスクパフォーマンス、ネイキッドガールズリーディングを見てきた。

 場所はダルストンのアパートの一室。ダルストンといえばクリーンじゃなかった頃のピート・ドハーティがヤクを買いに行っていたような場所で、あまり柄は良くないが独特の雰囲気がある街。

 アパートの中はなんか似非ヴィクトリア朝の高級娼婦の部屋みたいな感じ。トイレのドアが完全に壊れてたり、入り口が裏階段だったりして怪しさ倍増。
 これは衣装部屋。

 パフォーマンスをする部屋。





 プライヴェートスペースっぽくだらしないところがまた怪しい。中にバーもついてる。


 パフォーマンスは、真ん中のソファに四人の全裸のバーレスクアーティストが座って名作を朗読するというもの(本当に全裸だが、帽子とアクセサリとハイヒールだけはつけている)。来週ケイトとウィリアムが結婚するのを控えてロイヤルウェディング特集ということで、王子様やお姫様関係の小説や詩を読み上げる。最初は『鏡の国のアリス』のチェスのキングとクイーンの場面から始まり、小説はオスカー・ワイルドの『幸福な王子』やサン=テグジュペリの『星の王子さま』など。残虐版シンデレラみたいなやつも読んでいた。詩はシェリーの「オジマンディアス」、テニスンの「シャロット姫」など。

 まあ最初は全裸の女性が出てきたので驚いてしまったが、後は至極普通の朗読イヴェント。ただしダンスではなく朗読ということで慣れてないアーティストさんもおり、読みの巧拙がかなりはっきりしてた。元英語の先生だったというおばさまはさすがにすんごく読むのがうまくて惹かれたが、若くて美女でも声に張りがないと魅力が少ないかも。しかし『幸福な王子』とか、何度も読んだ作品でも朗読されるとまた違う味があって良かったなぁ…

 最後はテニスンの「シャロット姫」でしめたのだが、四人の全裸の美女が"Lady of Shalott!"と執拗に何度も繰り返すのはなんか異様な迫力があった。テニスン好きだと思ったことないんだけど、こうやって読むと俗謡みたいでリズムが良くてさすがに耳につくなぁ。

 と、いうことで、なんというかまあとても不思議なパフォーマンスだった。一言で言うと、19世紀の高級娼婦の私室に招かれたと思ったら突然相手が貴婦人に変わって朗読サロンになってしまったというような…まあ、クイーンの「キラークイーン」をイメージしてもらえればわかるかな。非常に上品で知的だが同時にセクシーでまさに"teasing"な催しだったと思う。「本と娼婦はベッドに連れ込むことができる」とおっしゃったのはベンヤミンだが、まさにこれってそういう本のプライヴェートでちょっと怪しい快楽を引き出すためのパフォーマンスだよね。読書好きにもバーレスク好きにも超おすすめだと思う。

 なお、私が今まで行った二度のバーレスクショーと同様、客の半分は女性。ロンドンのバーレスク人気はかなり女性に支えられてるな。

 こういう催しは安くできてしかも普段文学を読まない人に本を紹介できるので日本でもやったらいいと思うんだけど、猥褻物陳列罪になって無理なのかな…ヒマしてて本が好きな男子大学院生とかを集めてNaked Grad Boys Readingとかやったらどうだろうか。