ザ・スペース『アフラ』〜アフラ・ベーンの伝記ものなのだが…

 ドックランズのザ・スペースというちっちゃい劇場(パブに付属してるイベントスペース)で『アフラ』を見てきた。うちのカレッジの演劇研究の人たちが関わってる小規模なオフウェストエンドの公演だということでそこまで期待はしていなかったのだが、行ってみたらほんっと小さい劇場でびっくり。

 戯曲の内容は王政復古期の有名な劇作家で国王陛下に仕える女性スパイであったという噂もあるアフラ・ベーンの生涯についての説明を後ろのスクリーンにプロジェクタでうつしだし、前の舞台ではベーンの代表作のうちその説明に関係ありそうな戯曲の一部を抜き出して演じるというもの。例えば後ろのスクリーンにベーンの貧乏暮らしについての説明が映し出されたら"The Lucky Chance"の家賃に工面に奔走する場面、政治と演劇の関係についての説明が映し出されたらチャールズ二世の愛人で元スター女優だったネル・グウィンに献呈された"The Feigned Courtesans"の一場面、という感じ。


 役者は頑張ってると思うのだが、いかんせん戯曲が…なんというかあまりベーンがどういう生涯を生きたのかはよくわからんような気もするし、そもそも作品がほとんど上演されないベーンみたいな作家の戯曲を抜き出してちょっとずつ上演することに意味があるのかって気がする。ベーンに限らず王政復古期の作家の作品はその前後の時代の作家に比べて上演されることが少ないと思うのだが(ルネサンス期はシェイクスピアを初めとしてマーロウやフォードなんかも舞台にふつうにかかるし、18世紀は最近シェリダンが来てるみたいだし)、こういう半端なダイジェストみたいな上演をするんなら何かひとつの戯曲を最初っから最後までやるべきではないのかね…シェイクスピアみたいによく上演されるような作家ならダイジェストでやるとまた別の味が出るようにも思うのだが、もともとどういう戯曲なのかみんなよくわかってないベーンの作品をこういうふうに部分だけ抜き出してきてやってももとの話のセクシーで気の利いた魅力的な部分がわからんのではと思う。
 

 しかし、王政復古期の芝居はなかなかロンドンでもかからないなぁ…比較的覚えやすい韻文の台詞で書かれたルネサンス期の芝居と違って華麗な散文を駆使した台詞が多いから台詞回しの点で役者に敬遠されがちなのか、異様に気が利いたくすぐりや変わった言い回しが多くて客にわかりづらいと思われているからなのか(←はっきり言って非ネイティヴの客だと事前に戯曲を読んでいかないと全くわからんと思う。英語難しい!)、それとも猥褻すぎてウケが悪いのか(現代の戯曲に比べてそこまで露骨な性表現があるとは思えないのだが、表現方法が違うからな)、なんでかね?来月縮約版で『当世風の男』が上演されるらしいけど、これはどうなんだろう?ランチシアターだしなぁ…