RSC『マクベス』〜演出に演技がついてきてない感じ

 RSCのメインシアターでマイケル・ボイド演出の『マクベス』を見てきた。

 これがRSC劇場。

 で、『マクベス』の内容なのだが、とにかくまあ斬新には違いない。魔女のかわりに三人の子供たちが予言をするわ(冒頭の有名な魔女の台詞はカット。最後のほうでこの子どもたちはマクダフの子どもたちだったとわかる)、死んだヤツは全員亡霊になってマクベスに取り憑くわ(バンクォーの亡霊がマクベスをいっぺん暗殺する場面で一部がおしまい、第二部は同じシーンをバンクォーの亡霊なしでもういっぺんやるところから始まる)、門番の場では爆竹が爆発するわ、とにかく演出が新しい。

 …しかしながら全体的になんとなくピンとこなかったのだが、まずはどうも役者の演技にちょっと問題があるのでは…という気がする。ガーディアンの劇評が" I would have liked more focus on the performances rather than the concept"「コンセプトよりはもうちょっと演技に焦点をあててほしかった」と書いているが、まさにそのとおり。マクベスやマクダフ夫人、バンクォーなんかは好演してたと思うのだが、芝居全体の色合いによくあっていたかというとちょっと疑問。ジョナサン・スリンガーマクベスはかなりイマイチだったように思うのだが…バンクォーの亡霊に悩む場面では客席から笑い声が出てたのだが、なんかちょっとマクベスにしては「面白すぎる」ような気がした。コンセプト重視で演技がついてきてないプロダクションって、私はかなり苦手なのだが…

 あと、これは完全に個人の好みだが、マクベスを見に来て魔女が出てこないってつまらんなぁ。全体的にキリスト教色が強く、ロスが敬虔な聖職者という役どころなのだが(これはスコット・ハンディが好演してた)、『マクベス』でキリスト教色を強くして魔女を出さないってなんかうちの感覚では非常に奇っ怪な気がする。『マクベス』っていうのはもうちょっと非キリスト教的な価値観が支配する話、神はなく運命だけがある世界の話(なんてったって魔女の予言は結局実現するんだから)として演出したほうがずっと面白いんじゃないかね?