ローズ座『フォースタス博士』〜控えめすぎてイマイチだった

 ローズ座でクリストファー・マーロウの『フォースタス博士』を見た。頑張ってはいるが、かなりイマイチな気が…

 これはルネサンスファウスト物語で、知識のために悪魔に魂を売ったフォースタス博士の地獄落ちまでを壮大なブランクヴァースで描いた道徳劇ふうの悲劇なのだが、そもそもテキストに問題があって(二種類違う版がある)どの台本を使うか決めるのからして大変だし、はたまたいったいどう解釈して上演したらいいのかについてもいろいろ議論があってなかなか難儀な作品である。


 …しかし、この上演は思ったほど面白くなくてちょっとガッカリした。前回ローズで見た同じクリストファー・マーロウの『エドワード二世』が大変良かったのと、あとテキストが読んでいるだけで間違いなく面白い(というか私の趣味にあっている)ので上演しても普通に面白いはずだと思ったら、どうやらこれ上演が難しい戯曲みたいだな…なんか、台詞を読んでいる時だとなんかすごいことが起こってると想像して楽しめるんだけど、実際に舞台でいろいろやってるのを見ると「なんだこの程度か」みたいになっちゃってちょっと幻滅した。とくにローズ座が狭いのがいけないねぇ…この戯曲はでっかいハコで舞台装置を駆使してやるか、あるいは全く何にも使わないでやったほうがいいんじゃないかと思うのだが、ローズ座の演出はちょっと中途半端だった気がするなぁ。


 あと役者の演技のほうもちょっとハコにつられて小さくなっちゃった感じで、フォースタス博士がえらく控えめな感じでもっと大げさに学者の知への欲望と傲慢を表現したほうがいいのではと思った(この間『ファウストの劫罰』でマッドサイエンティストふうなファウストを見たばかりだからそう思うのかもしれないが)。悪魔たちは頑張っていたと思うのだが、相変わらず服飾のセンスがイマイチな気が…前から言ってるけど、ローズ座はもっとファッションに気を遣ったほうがいいんじゃないかな?


 と、いうことで、この戯曲をうまくやるのはたぶん難しいねぇ…グローブ座でも同じ戯曲を今シーズン上演することになっているので、そちらに期待したいところ。


 ちなみに、『クレイドル・ウィル・ロック』というティム・ロビンスの映画でオーソン・ウェルズがマーロウの『フォースタス博士』を上演した時の話がちょっとだけ出てくる。この上演は好評だったらしいので、うまくやれば舞台でも面白いはずなのだが…