チェコ七日目、チェスキー・クルムロフ

 さて、金曜日でアカデミックアクティヴィティが全て終了し、土曜日から学会ツアーに参加。大量のシェイクスピアリアンがバスに乗ってプラハから南ボヘミアへ移動するというふしぎなツアーが決行された(ヨーロッパの学会だと、アカデミックアクティヴィティ終了後にこういう修学旅行みたいなやつがついていることが多い)。参加者はほとんどProfessorとかのおじさまおばさまで、院生やポスドクは女性が二、三人いる程度だった。

 この日は南ボヘミア世界遺産、チェスキー・クルムロフを見学して一泊。修学旅行(?)なので、ルネサンスの君主たちを偲ばせるお城とバロックシアターがメイン。

 チェスキー・クルムロフ旧市街の入り口。


 中に入るとまあそこはもうおとぎの国。




 泊まった広場とその周辺。




 ここにもシェイクスピアが!

 ピーター・ホランド他、professor方がこの店に群がってました。

 古い絵が描かれた大変由緒あるらしい建物。一枚目は男性の一生を十段階で表し、二枚目は錬金術のサインを表しているそうです。


 プラハ城方面。

 夜になるとこうなる。とても風情ある。

 城から見た街。

 やはり、夜になるとこの風情。
 

 城で飼われているクマ。オルシーニ家とのゆかりを示すためにクマ(イタリア語でオルソだそうな)を飼っているらしい。遅くとも1707年にはクマが城の中にいて、たぶんもっと前からいたのだろうということ。

 庭園。







 ここで少し雨がぱらついたのだが、すぐ晴れた。

 城の中を見学した後、バロックシアターを見たのだが、このバロックシアターは18世紀の劇場を大変よく修復してあるもので、なんてたってシェイクスピアリアンなもんだから全員大興奮。奥行きのある舞台自体もとても素晴らしいのだが、18世紀の舞台装置(せりや背景を手動で転換する装置、効果音を出す装置など)を再現した奈落に入れてもらった瞬間、おじさまおばさまがたが子供のように目を輝かせはじめ、やれこれはどう動かすんだ、あれはどう動かすんだとガイドさんを質問攻めにし、挙げ句の果てにトラップドアをあけて舞台にのぼってみようとする先生まで出る始末。実際に舞台装置を動かすことができないので再現したDVDを見せてもらったのだが、バロック式の背景転換が非常によくわかるものでみんな興味津々だった。ほぼ全員がこのDVDを欲しがってたのだが映像は売ってないそうで、ツアー参加者は私も含めてその点に不満たらたらであった(マネージャーがDVDを売りたがらないらしいのだが、もし売ってたらたぶんあの日だけで40枚は売れたと思うけどね…)。この劇場では年間数回しか上演がないそうで、全く残念なことである。


 その後、フリータイムになったので私はエゴン・シーレ文化センターへ。

 シーレはチェスキー・クルムロフに住んでいたことがあるそうで、街並みの絵もたくさん描いているのだが、街並みはシーレの頃と今でほとんど変わってないらしい(写真と絵を並べて展示してたのだが、シーレは個性的であまりリアル志向じゃないからそっくりってわけじゃないけど表面的にはだいたい同じに見える)。
 で、街並みの絵は現実をかなり自分のフィルターに流し込んで面白く見てる感じで結構いいと思ったのだが、人を描いた絵はあまりいいと思わなかったな…とくに自画像がいかにも「オレってアーティスト」ふうな衒いがあってそんなに好きになれなかった。


 この後、夜はなぜかアンガスビーフを食べさせられるなど(チェコまできてアンガスかよ!)いろいろツアー的な食事をした後、チェコ語マクベスの野外上演へ。
 ↓これは客席じゃなく、楽屋みたいなものだと思う。

 ちょっとわかりにくいのだが、こういう客席があり、360度いろんな方向に回転するようになっている。

 一応図示してみた。むにゃむにゃ線で囲んであるところがパフォーマンススペース。

 常にこのパフォーマンススペースのどこか一箇所で必ず芝居が進んでおり、客席はそこが正面になるように回転する(客席は階段になっていて、もちろん低いほうが役者に近い)。客席正面以外は客から死角になるので、舞台装置の転換は客席があっちを向いている間に行われる。役者がパフォーマンススペースを動き回り、客席がそれに合わせてゆっくり動くこともある。

 そんなわけでまあまず客席が動くという自体驚きなので、シェイクスピアリアンズ大興奮。またまた野外でやるということで、火や煙を惜しげもなく使った派手な演出が多く、ヴィジュアル的に飽きさせない上演だった。チェコ語が全くわからないので台詞回しについては全くコメントできないのだが、マクベス役の人がジュード・ロウ風なかっこいいM字ハゲ気味で(←よくわからない言い方だが)いかにも若いのに疲れ気味な貴人って感じだったし、マクベス夫人役の人はブロンドのヴォリュームあるショートヘアにレザーを着込んでかっこいいマクベス夫人だった。魔女も寒い中頑張ってた。カットが多くてやや物足りない気はしたのだが、あまりにも開演時間が遅くて(21:45〜23:30という上演)寒かったので、短くするのはしょうがないと思う。