クラレンス・ハウス一般公開

 バッキンガム宮殿のついでに、イギリスの東宮御所であるクラレンス・ハウスにも行ってきた。バッキンガム宮殿のすぐそばにあるのだが、宮殿というよりはモダンな邸宅という感じ。

 ここは故クイーン・マザーことエリザベス皇太后(『英国王のスピーチ』でヘレナ・ボナム・カーターが演じてたあの人)が一時期管理してた屋敷だったそうで、皇太后の趣味で装飾してある部屋が多い。皇太后は美術を見る目があったそうで、まだドガが無名だった頃に二束三文で絵を買ってそれを客間にかけといた…ら、今ではそれがクラレンス・ハウスのコレクションの中で一番高い絵になってしまったそうである。クイーン・マザーの子どもの頃の写真とかも飾ってあったのだが、なんか年配の人たちは写真を見てすぐクイーン・マザーだってわかるみたいで(全然面影ないのに!)、やはり生前とても人気があったんだなぁと思った。クイーン・マザーは大変肝の据わった女性で、宮殿がロンドン大空襲を食らった際に「爆撃されて良かったです。これでイーストエンド(空襲被害の大きかったワーキングクラスの街)に顔向けできますから」とか言ってヒトラーをふるえあがらせたという伝説があり、いかにもイギリス人に好かれそうなタイプの女性である。なお、クラレンス・ハウスも空襲で少し被害を受け、ランカシャだかどこだかの住民の寄付で修復されたらしい。

 クラレンス・ハウスはこの他にもいろいろ第二次世界大戦の歴史を感じさせる展示があり、とくにキッチンに飾ってあったウィンザー城の絵画シリーズは面白かった。エリザベスの父ジョージ六世は戦時中にウィンザー城が爆撃されるのではと心配し、万一破壊された時に忠実に再建できるよう、画家を雇っていろんな角度からカラーの絵を描かせたらしい。ところが戦時中でみんな暗いムードだったためできあがった絵は結構どれも灰色っぽい黙示録的なトーンになっており、これを見たジョージ六世は画家に「何かお天気に恨みでもあるの?」みたいなことを言ってからかったのだそうだ。ジョージ六世はまじめ人間みたいな感じだが、意外とユーモアのセンスもあったようである。


 外には畑があり、健康オタクのチャールズの肝いりでオーガニック野菜を作ってるそうだ。

 なお、バッキンガム宮殿は日本語のオーディオガイドがついているが、クラレンス・ハウスは英語のガイドさんがついてグループツアーをするようになっている。美術品の解説が中心なバッキンガム宮殿に比べると歴史の話が多いので、王室史や第二次世界大戦に興味のある人はクラレンス・ハウスも是非行くといいと思う。なお、こちらもバッキンガムほどではないが夏期公開中はかなり混んでいるので予約が絶対必要である。