ロンドンアイリッシュスタディーズセミナー2011年度第一回、ロイ・フォスター

 本年度最初のセミナーということで、ロンドンアイリッシュスタディーズセミナー第一回に行ってきた。本日の講師は超有名学者であるロイ・フォスターなのだが、なんとロイ・フォスターは去年の末のセミナーに来るはずが大雪でセミナーが中止になったため来れなかったので、本日は同じテーマでリベンジマッチ。思ったほど文学の話がなかったのと、あと予備知識ほとんどなしで行ったので固有名詞がばんばん出てきてほとんど聞き取れなかったな…耳できいただけでは再構成できない名前の人が多いし。

 内容としてはIrish Revolutionの時期が対象で、このアイルランド革命(と訳せばいいのかはあまり自信ない)という概念は(もちろん1798年のユナイテッド・アイリッシュメンの蜂起のほうではなく)イースターライジングの時期を中心にホームルール関係のごたごたからアイルランド自由国ができるまでの時期に起こったいろいろな出来事の総称として用いられるらしい。ロイ・フォスターによると10年くらい前からよく使われるようになったやや新しい術語だそうだ(一応2002年にThe Irish Revolution, 1913-1923というアンソロジーが出てるのだが、MLAビブリオグラフィでは初出1977年なのでそれ以降かね)。ちなみにCiNiiでひっかかる日本語論文はひとつだけなのだがこの論文がえらい気になる感じのタイトルである(ロジャー・ケイスメントって新たなるアイルランド史上のゲイ・アイコンなんじゃないっけか)。


 それはともかく、ロイ・フォスターの関心としては革命に関わったたくさんの人たちの個人史を集めて再構成することでこの革命期間中に何が起こったかを探るみたいなことをしたいらしく、「ある人がどう変わったか、そしてそれがその人の周囲をどう変えたのか」に興味があると言ってた。たしかにこういう視点でいろいろな史料をネットワーク化するのはなかなかダイナミックに革命の様子がわかりそうである。

 で、今のところわかってることとしては、とりあえず革命に関わったうちインテリについてはかなり親の世代に対する反発があり、親がどんなにすすんだ自由思想家であろうとナショナリストでなければダメ、みたいな雰囲気があったらしい。とくに女性はそれが顕著だそうで、革命関係者にはダブリンで高等教育を受けた女性がわりといたらしいのだが(女子教育が盛んでメディカルスクールに結構女性が通ってたらしい)、「農民になりたがる教育ある女性」が多かったと言ってた。あと、質疑応答で革命と演劇の関係についての話があり、アイルランドの革命に参加した人々がいかにself-dramatiseが好きだったか、みたいな話になっていたのが面白かった。