『さすらいの女神たち』に出てくるキャバレー・ニュー・バーレスク一座の公演を生で見てきたよ!

 ロンドンのチャリングクロス座で、映画『さすらいの女神たち』の主役であるキャバレー・ニュー・バーレスク一座の公演を見てきた。大スターのミス・ダーティ・マティーニのパフォーマンスがロンドンで見られるということで楽しみにしてたのだが、予想以上に良かった!

 映画のほうは今シネスイッチ銀座ほかで公開中なので最近見たという人もいると思うのだが(うちはDVDで見た)、これは落ち目のプロデューサー、ジョアキム(マチュー・アマルリック、監督・主演)がアメリカのバーレスクスターたちを引き連れてフランスのいろいろな港町をドサ周りするが、肝心のパリ公演が流れてしまって…というような話である。このスターたちはホンモノのバーレスクアーティストで、公演のフッテージは実際のフランス公演ものを使用している。いかにもフランス映画っぽく何かすごい出来事が起こったりするわけではないのだが、力強く個性的なアーティストたちの華やかなショーと、ダメ男のジョアキムのうらぶれた暮らしぶりの対比を淡々と見せるだけでなんだかわからんけど面白い…というようなまあ独特の魅力がある映画である。批評でも言われているが、渋くてドキュメンタリーっぽい画面作りにはカサヴェテスの影響があるようだ。


 で、今回のロンドン公演のプログラムはだいたい映画に出てくるものと同じだが、ロッキー・ルーレット(唯一の男性メンバー)は国王ルイのルーティンではなくケンタッキーフライドチキン(?!)のルーティンを披露、ダーティ・マティーニの蜘蛛の巣のルーティンはオーソドックスなダンスルーティンに変更、あとキトゥン・オン・ザ・キーズはエリザベス女王のお面をかぶって登場するなど、少し演目を新しくしたり、あるいはローカライズ(フランス人受けするものよりはイギリス人受けしそうなものをやる)しているようだ。

 で、とにかくダーティ・マティーニはすごかったな…最初のオーソドックスなダンスルーティンだけでも踊りが上手なことがわかって十分魅力的だったのだが、次にやった映画にも出てくるお金を食べる自由の女神のルーティンがとにかく良かった。音楽は"God Bless the U.S.A."で(ドリー・パートンのヴァージョンだったかな?)、最初は目隠しをしてアメリカ国旗をまとい、天秤を持った正義の女神の姿で出てくるのだが、なんかだんだん金の亡者になって半裸でお札を食い散らかしながら下品な踊りをしはじめるというまあ「五分でわかるアメリカ史」みたいな(?)パフォーマンスで、とんがってるしオリジナリティがあるし笑えるし、本当に面白かった!ダーティ・マティーニはファンから"big girl"とか言われているようにお腹もお尻もお肉がタプタプしていて決してメインストリーム文化でもてはやされるようなスレンダーな美女ではないのだが、踊り手としては非常に独創性があると思う。そういう人が全裸で諷刺的なパフォーマンスをやるというところが非常に世間の良識を笑いのめしている感じで魅力がある。


 あとロッキー・ルーレットのフライドチキンを舞台で食べたりホッピングしながらストリップするパフォーマンスはとにかく笑えてお客さん大喜びだった(近くにゲイカップルが座っていたがめちゃめちゃ喜んでて「もっとチキンないのかー」とか煽ってた)。しかしホッピングしながら脱ぐってものすごい体力と技術が必要だと思うのだが…よくできるな。

 他のパフォーマーもそれぞれ個性的な魅力があってすごくいいショーだったのだが、お客さんは半分以上女で、最後にアーティストたちが劇場内通路を通って退場していく時はお客の女性陣が通路に飛び出して一緒に踊ったりとかしていた。かなりお年を召したおばちゃま方が友人数人で来ていたのだがこちらもノリノリ(←こういう年取っても若向けの舞台が見られるおばちゃまになりたい)。


 最後にパフォーマーの写真撮影タイムがあったので、撮影してきた。