ロンドンアイリッシュセミナー2回目、カルロ・デニーナ

 本年度2回目のロンドンアイリッシュセミナーに行ってきた。カルロ・デニーナという18世紀イタリアの比較文学者の話で一見全くアイルランド文学とかには関係ないように見えるのだが、なんでもデニーナはEnglish writersとIrish, Scottishの作家たちを切り分けて分析した非常に早い例らしい。とくにデニーナはアイルランド文学を大変高く評価しており、とくにスウィフトやフランシス・ハチソン(アイルランド生まれのスコットランド人)なんかを褒めていて、ハチソンをスコットランドではなくアイルランドの書き手と見なしていたそうだ。あとデニーナはアーガイル公爵をパトロンとしていたのでスコットランドの文学にも非常に興味があったらしいのだが、コリン・マクローリン(たぶん数学者)のニュートン的な思想とライティングスタイルを評価してたとかいう話をしていて、どうも文学をかなり広く考えていたようである。

 で、面白いことにこのデニーナの比較文学の著作Discorso sopra le vicende della letteratura は英訳・仏訳・スペイン語訳されて英語圏でも広く読まれ、アイルランドスコットランドの人々に「アイルランド文学」とか「スコットランド文学」について考えさせる契機になったのでは…とかいう話だった。このあたりはまだわからないことも多いようだが、イタリアの研究者がアイルランドスコットランドの「国民文学」形成に影響を及ぼしていたとすればそれはかなり面白い話である。というか比較文学って18世紀からあったんか…