オクスフォードプレイハウス『クリュタイムネストラ』〜どこがクリュタイムネストラだったのかよくわからない

 がっかり調査の夜は友人たちと落ち合ってオクスフォードプレイハウスで『クリュタイムネストラ』を見た。これはアイスキュロス『供養する女たち』の翻案らしいのだが、台詞は古典ギリシャ語(携帯電話の電源を切るように注意する掲示ギリシャ語で出てた)。オクスフォードでは三年に一度、学生がギリシャ劇を上演するしきたりがあり、19世紀末からやってるそうだ。

 で、まあ一言で言うと「学生演劇」で、この間ゲイト座で見た『エレクトラ』なんかとは比べものにならないと思うのだが、キングズの『ペルシャ人』よりは全然マシだった。前半は眠くてどうなることかと思ったが、明晰な台詞回しはとてもよかったと思うし、後半は動きがあり、クリュタイムネストラも出て来て格段に良くなった気がする。

 ただ、全体的に演出がジャポネスクで、登場人物は全員えせ着物みたいなのを着ているし、所作も能と歌舞伎のちゃんぽんみたいになっているところはあまりいただけない(たぶん能の動きを参考にしていると思うのだが、クリュタイムネストラを殺した後のオレステスの動きがあまりにもヘンで会場から笑いが漏れてた)。蜷川の『オイディプス王』でも見て影響されたかな?

 それからどうして『クリュタイムネストラ』というタイトルにしたのかは謎である。『アガメムノン』は実質的に『クリュタイムネストラ』だろ、という気がするが、『供養する女たち』にはあまりクリュタイムネストラ出てこないしな…

 あと、立て続けにエレクトラものを見て思ったのだが、ギリシャ悲劇ってできるだけテンポ早くやらないと現代の客には結構厳しいんじゃないだろうか。能と同じで非常に様式化されているのでものすごく眠いのだが、能と違って演出の形が決まっているわけではないのでもっといくらでもいじれるはずである。学術的に正しくなくてもいいから、もっと客中心の上演にしたほうがいいんじゃないかって気がする。