ホワイトベア座、ジョン・マーストン『不満居士』(The Malcontent)

 ケニントンのホワイトベア座でジョン・マーストンの『不満居士』(The Malcontent)を見てきた。マーストンの芝居を見るのはこれが初めて。

 ホワイトベア座(私は勝手にしろくま亭と呼んでいる)はパブシアターで、パブの後ろに40人くらいしか入らないちっちゃいハコがあり、飲み物を頼んで入ることができる。イギリス・ルネサンスのあまり上演されない芝居をリバイバルするのに熱心で、去年はベン・ジョンソンの『悪魔は頓馬』をやってた。『悪魔は頓馬』も『不満居士』もやったら話が入り組んだブラックユーモア劇でちょっと仮面劇というかキャバレーやサーカスのショーふうなところもあるのだが、『不満居士』はセットがシンプルなわりに衣装や化粧が派手で原作よりもさらにショーっぽくなっていた。

『不満居士』はジェノヴァの腐敗しまくった宮廷の話で、野心的な家臣メンドーザの策略で不当に廃位された公爵アルトフロントが不満ばかり言っている諷刺的な食客マルヴォーレに変装して宮廷に戻り、復位を画策するという話である。現公爵ピエトロ・ジャコモの妻オーレリアはメンドーザと不倫しており、メンドーザはオーレリアとまた別の求愛者ファルネーゼの不倫をバラして公爵夫妻の仲を裂く一方、オーレリアを誘惑しジャコモを殺して自分が公爵になろうとする。公爵になったらオーレリアは用無しで、アルトフロントの妻マリアと無理矢理結婚するつもりである。ところがメンドーザに殺人を依頼されたアルトフロント(マルヴォーレ)はこっそりジャコモを助け、ジャコモに殺されたはずのファルネーゼとともに妻マリアを救うべく正体を現す…という話。最後は改心し仲直りしたジャコモ夫妻からアルトフロントが公爵の位を戻されてハッピーエンド。

 なんか戯曲を読んだ時点ではそんなに面白くなさそうだと思ったのだが、舞台にかけてみると思ったよりも笑えて良かった。役者は頑張っているし、言いにくそうな台詞も生き生き言ってていい。しかしながらメンドーザがどうやってアルトフロントを廃位させたのかがわからないとか、いろんな要素を詰め込んでいるわりには書き方が荒っぽいところがあるし(少年劇団用に書いたらしいので、いろいろ詰め込みつつできるだけ単純にしようと思ったのかも)、あと台詞もちょっと華やかさに欠けるような感じで(ノンネイティヴなのでよくわからないのだが、台詞が大味だと言ってマーストンを嫌う人も結構いるらしい)、同じようなストーリーの『尺には尺を』には上演効果の点で負けるかなぁという気がした。