『ニューイヤーズ・イブ』〜今日か明日中に行ったほうがいいです

 『ニューイヤーズ・イブ』を見てきた。すごく批評が悪かったので全然期待していなかったのだが思ったよりは全くマシだったし、年末にお祭り気分で見る映画としてはまあいいと思う。ゲイリー・マーシャル監督作品で前作『ヴァレンタインデー』(未見)の続編企画らしいが話はつながってはおらず、祝日を舞台にしたラブコメオムニバスという形式だけを踏襲したらしい。

 舞台はニューヨークの2011年1月31日。タイムズスクエアでのカウントダウンに向けていろんな男女のカップルがすったもんだする様子を群像劇ふうに描く、というものである。基本的には大晦日のニューヨークの雰囲気じたいをとらえようという映画なので話はないも同然、予定調和的に全てのストーリーがハッピーエンドに流れ込み、お気楽ホリデームービーとして楽しめる。同種の映画としては『ラブ・アクチュアリー』(クリスマスのオムニバス)があってこれはこういうホリデームービーとしてはすごいよくできてたと思うのだが、これには出来は及ばない感じ。あと全体的にストーリー(ロックミュージシャンが出てくるとか)も作りも同じく大晦日のニューヨークが舞台の『200本のたばこ』に似すぎていてオリジナリティはない気がした。全体的に脚本がきちんと最後に一点に集中するようになってないのでここが難点。あとキャストにも少し疑問がある。いくらなんでもゴージャス熟女のミシェル・ファイファーが落ち込んでるブス作りなおばさま役っておかしいだろ…ザック・エフロンともあまり息があってるようには見えなかった。

 ただ、ザック・エフロンはかなり良かった。この人、これからどんどん大人向けのラブコメに出るといいんじゃないかと思う。それからボン・ジョヴィと『グリー』レイチェル役のリア・ミシェルの画面分割デュエットにはちょっと驚いたかな。


 あと、私は基本的にヘクター・エリゾンドには点が甘い。ゲイリー・マーシャルの映画には必ずこの人が出てくるが、なんかこの人が出てくるだけで映画が面白くなったように感じてしまうのが問題(?)である。今回も頑固な電飾職人コミンスキの役で登場していて、この人が出てくるだけで画面がなんか興味深くなるような気がしてしまった。

 しかしこんだけカップルが出て来てひと組もセクシャルマイノリティカップルがないのはちょっとおかしいと思ったなぁ…最近のラブコメセクシャルマイノリティも客層にしているはずなので、群像劇なら必ず一人くらいは出てくると思うのだが。例えば、新年に赤ちゃんを早く生んだほうがお金があたるということで競争するカップルのうち、チャームスクールの先生じゃないほうのカップルがレズビアンとかだったらもっと面白かったんじゃないだろうか(この出産競争の挿話は「この金が手に入れば奨学金のローンが返せる!」とかいうギャグもあってそれなりに面白かったが)。そのへんも脚本の詰めが甘いところのひとつかも。


 まあそんな感じで、なんも考えずにお祭り気分で楽しみたいという方は是非今日か明日中にどうぞ。お正月以降になると白けると思うのであと二日が勝負です。