18世紀のエロチラシの束から芝居に関係あるものだけをよりわける簡単なお仕事です〜18世紀の風俗ガイドをみつけた

 先週末くらいから大英図書館で18世紀半ばのイギリスで発行されたチラシの束を見ている。私のお目当てはもちろん演劇チラシなのだが、実はこの束のかなりの部分がエロチラシというかどこに行けば娼婦と遊べるかというガイドである。

 例えば1770年頃に出た"LIST of the SPORTING LADIES" (BL請求番号1850.c.10.(106.)) の書き出しはこんなんである。

MISS RATTLETRAP, from Pall-Mall, London, is calculated for first rates; the rider must be very careful of her as she starts at full speed. Price 15 s. Banknotes taken, if good, but objects to paper currency in general. May be heard of at the bagnio, Catch-all Lane.

「ロンドン、ペルメルのミス・ラトルトラップは最高価格です。最初っからフルスピードですので乗り手はとてもお気をつけて。値段は15シリング。良好な場合は銀行券を受け付けますが、紙幣は一般的に不可。キャッチオールレーンの曖昧宿にてお問い合わせ」

 "Sporting Ladies"は「スポーツする女性」ではなく娼婦のことで、内容もthe rider とかfull speedとか乗馬を装っているがあきらかに買春の話である。ちなみにこの女性はこれより五年ほどあとに出た別のチラシにも登場していて相変わらず文面はほとんど同じである。この五年ほどあとのチラシ、"A Complete and Downright List of the SPORTING LADIES"(1850.c.10.(107.))にはふしぎな文言がある。

Miss Masculine, a strapping wench, her riders must be careful as she is very apt to be restive. N B. She allows no gin or peppermint to be drank in the room, but includes all charges in 5s.

「ミス・マスキュリン(男の娘さん)はがっしりした女の子です。銀行券不可。じゃじゃ馬になりやすいので乗り手はご注意。部屋でジンやペパーミントを飲むのは禁止ですが全部込みで5シリング」

 どうもこの娼婦は男っぽくて(源氏名がmasculineって)ガタイが良いらしい(本当に女なのかな?わかる人にはわかる符牒で、男娼なのかも?)。あとperppemintというのはハッカのコーディアルのことで、OEDにはこれにそっくりな例文が(「不可」じゃなくて「可」だが)出ているのでどうやら娼婦の部屋でハッカのコーディアルの飲んでいいかどうかは当時の男どもの関心事だったようである。強壮剤みたいなもんかね?
 
 あとなんかチラシから推定すると紙の貨幣は売春宿では受けがよくなかったようである。コインで払わされたんだろうか。あと、おつりは出ないそうだ。

私が見ている束に入っているものの画像はサイトにないようだが、スコットランド国立図書館がいくつかこの手のチラシ画像を公開しているようで、見た目はこれに近い。一枚のペラペラで、紙質もあまりよくないものである。どうやら18世紀のイギリスの大都市の男どもはこういうチラシを見て買春をしていたらしい。携帯もパソコンもなかった時代のことである。