イタリア食い倒れ旅行(14)〜トリノ三日目、アグリツーリズムが超悲惨な結果に

 トリノ三日目はアグリツーリズムということでカネッリにあるRupestrという農場+イカルディというワイナリー訪問。しかしこれが悲惨な結果になった(少なくとも私にとっては)。

 とりあえず鉄道が遅れて途中で長距離バスに乗り換えることになったのが運の尽き。私は長距離バスが大変苦手なのでものすごいバス酔いになってカネッリに到着する頃にはフラフラに。

 まずRupestrという農場に行ってごはん。


 ここのごはんのメニューはすごいもので、まず牛肉カルパッチョが出て来て次にチーズ(はちみつをつけて食べるやつがすごい美味かった)と野菜。
 地元のチーズ五種類。左側のはちみつをかけて食べる緑色のやつがすごい美味い。右側の赤くてパラパラのチーズは一番熟成度が高いそうだが、かなり刺激的でちょっと食べにくい。

 野菜。左側の赤いのがパプリカチーズ巻き、その左下がズッキーニ、上がツナであえた茄子。全部美味い。

 かぼちゃのフランのチーズがけ。

 この後、プリモとしてアニョロッティ・ダル・プリン(ピエモンテ特有の肉入りラビオリ)、セコンドとしてホロホロ鶏のローストとパプリカいため、その後デザートにブジエとシロップ付けのサクランボ。

 二次ちょっと前に始まったランチが終わったら四時すぎ。美味しいけどこれはちょっとつらい…
 その後、この農場のミニワイナリーを見せてもらう。



 なぜか歌舞伎のマッチ?が…農場主さんは日本通らしい。

 二階の夏用レストランからの風景。全部ぶどう畑。



 キッチン(クッチーナ)。

 こんなわけでこの農場を出たのは午後五時くらい。この後農場主さんがカスティリオーネ・ティネッラのイカルディのワイナリーまで車で連れて行ってくれたのだが、私は激しく車酔い。

 …それでワイナリーでいろいろイカルディのワインについて説明してもらったのだが、これがまあ私にとっては拷問であった。というのも私は全く酒が飲めないのでワイナリーとかに付き合うんならこのあたりのワイン作りの歴史とか技術とか、どうやってワインが作られて飲む人の手に届くのかということに関する知識を期待していたのだが、このワイナリーではなんかワケのわからないお花とかマトリックスの一場面(?人工物を象徴しているらしい)とかの静止画像が延々と続くへたくそなプレゼンを見せられ(プレゼンなんだからもっと文字を動かすとかしてわかるようにすれや)、イカルディの基本理念は調和なので自然との調和を目指すためいろいろやってます…とか言われたのだがなんかもうスピリチュアリズム超苦手な私としてはかなり気味が悪くなって帰りたくなってきた。
 なんでもイカルディはこの本に基づいて種をまいたり収穫したりしているらしい。


 花の日とか種の日とか一年で全部決まっていてこれは月やら星の動きによって決められているそうで、プレゼンする人はこれは神秘的なこととかじゃなく6000年くらい前に既にあったのだ…という話をしていたが、私には仏滅に結婚するなとかそういう類の迷信としか思えなかった。そういうのはルネサンスで終わったと思っていたので真面目にそういう話をされるとかなり引く。このカレンダーに応じて農作業をするらしいのだが、気候は年によって違うのにそんなん何か意味あるのか…?しかも惑星の動きを説明するプレゼンのバックの音楽がやたらエンヤだったりして、エンヤに別に恨みはないのだがエンヤをバックにスピリチュアルな話をされるのは私は大嫌いなのでなんかもうすごいつらかった。
 ↓イタリアの農作業カレンダーはアマゾンでも売ってるらしい。

 …で、まあできるだけ化学肥料を使わないでハーブを煮立てた肥料を使っているとか(そのせいでワインはすごいハーブっぽい香りがあって飲まなくてもにおいだけですごかった)、SO2を少なくするため1回目の発酵の時は入れないで瓶詰めの時だけ入れるとかいくぶんかは技術的な話も教えてもらえたのだが、設備を見せてもらったりはできなかったので全く飲まない私にはつまらないことこの上ない。ワインはすごく美味しかったらしいのだが飲めないし…別に農事暦の話をしたっていいんだけどさ、その話ばっかりでこんなに機械や歴史や技術の話が少ないってどうなの?
 ワイナリーの倉庫みたいなところ。結局見せてもらえた設備はここだけ。

 その後カネッリの農場主さんの車でトリノまで送ってもらったのだが、私はあいかわらずひどい車酔いで死んでいた。全く二時間かけてひどい車酔いで最後にスピリチュアリズムを見せられるとは来なきゃ良かったと思った。なんというか、ああいう農村に古くからある迷信と都会人の考える理想化された田舎がうまいことまざっちゃって、技術の変化や歴史、流通といった農業と食べ物の重みを感じさせる側面じゃなくスピリチュアルな理想だけを前面に出しちゃうようなアグリツーリズムはほんと御免蒙りたい。こんなんだからマクロビやらレイキやらがつけこんでくるんだよ!と文句の一つも言いたい。

 あと、サヴォイア王家の史跡を全然見れなかったのもアグリツーリズムがつまんなかった原因の一つかも。やっぱりトリノに来たからにはトリノという都市がピエモンテの大地から生まれる豊かな富を背景にしてできたんだということを実感できるよう、サヴォイア王家とリソルジメント関連の史跡群(まああるいはフィアットのお膝元にある国立自動車博物館とか、マカロニウエスタンの本拠地ということで映画博物館でもいいんだけれども)を先に見てからアグリツーリズムすべきだったろうと思う。農業が都市とどういう相互関係にあるのかわからんままでは、農業だけ見ていてもあんまり楽しくない。