Naked Boys Singing〜いいところもあるが、ちょっとアメリカすぎないか?(警告:本日のエントリには露骨な表現が含まれます)

 チャリングクロス座で'Naked Boys Singing'を見てきた。その名の通り全裸の男性が歌ったり踊ったりするだけのバーレスクレビューみたいなミュージカルである。

 一応ストーリーは『コーラスライン』からとっており、ヌードレビューに出演する男性8人がそれぞれソロで自分の人生とかについて歌いながらだんだん服を脱いでいって最後は全裸(本当に全裸。パンツも何もはいてない上、露骨な言い方で恐縮だが毛を剃っているので本当に丸見え)になるというもの。もともとはアメリカの演目でニューヨークでロングランしていたそうで、ロンドンでもロングランらしいのだが、日本ではまず上演できないだろうな。

 基本お笑いレビューで、中にはいかにも気の利いたキャバレー演芸らしい歌もある。ユダヤ系の青年が「僕の最初のpublic appearanceは全裸だったんだ〜」とか言う割礼の歌とかはなかなかひねりがきいていて面白いと思った。ただし最後のほうは男性器をいろんな言い方でひたすら連呼するとか、失敗した『ヴァギナ・モノローグズ』みたいないかにもアメリカふうの単純な笑いが多くなってまあ可笑しいけどちょっと「ええーっ」ていう感じもある。あとスラングが多くてノンネイティヴにはきつい…アフリカンの青年が"I beat my meat〜♪"という歌を歌って周りの人がみんな笑っていてなんだかよくわからなかったのだが、身振りでようやく"beat one's meat"=「自慰をする」という意味だとわかった。

 あと、なんかまた露骨な言い方で恐縮だが男性が全裸になると男性器がぶらぶらしてダンスには邪魔である。それでも飛んだり跳ねたりしてちゃんと踊っていた役者陣はすごいちゃんと練習したんだなーと関心した。あと、女性のバーレスクでよくある上半身のshimmyとかおっぱいのタッセルを振り回す動き、お尻を振る動きなどができないのでそのかわりに男性器を振り回す振り付けをしていた…のだが、あれを単にバカげた動きではなく洗練されたバーレスクルーティンにするには結構まだまだ努力が必要そうである。

 それで全体的に演目の雰囲気がものすごくアメリカ的で、バイブルベルトや南部のバプテストを諷刺する歌詞があったりするので、最後全員全裸になったりするのもたぶんアメリカのコンテクストでは「キリスト教保守派をからかうゲイカルチャー賛美!」みたいなものとして受け入れられるんだろうなあと思うのだが、1997年に既に超よくできた男性バーレスク映画『フル・モンティ』が大ヒットしてるイギリスでこういうことやってそういう政治的メッセージが明白かつ新鮮なものとして受け入れられるんだろうか…と思っていたらやっぱりなんかあまりうまくはいってないみたいで、WhatsonStageに出てるイギリスのレビューでは「うちらイギリスではグレアム・ノートンをずーっとテレビで見てるのでそんなに新鮮じゃないし」みたいなことが書かれている。まあやっぱりアメリカだからこそ人気が出るような演目なんでしょうなぁ。

 で、チャリングクロス座はパブが付設されているオフウェストエンドの劇場なのだが、昨日の客層は女子の集団とゲイの男子ばかりで、とくに女子はヘンパーティか何かなのかでっかいピンクの風船ででてきたペニスの模型を持ってたり、泥酔してたり、まあノリがとにかくアレで若干怖かった。それでまあ泥酔した女子が男性陣が脱ぐたびにキャーっとか言ったりするのだが、なんかゲイカルチャーのコンテンツをああいうふうにヘテロセクシュアルの女性が性欲の対象として消費するというのは若干良心が咎めることでもあり、かつ「なんでヘテロセクシュアルの女性ばっかり良心が咎めないといけないんだ」と疑問に思うこともあり、まあ素面のヘテロセクシュアル女性としてはわりと複雑であった。

 まあただ演目の質としては昨年ロンドンバーレスクウィークで見た男性バーレスクに比べると明らかにダンスの技術も諷刺の面白さも足りないと思うし、結構不消化だったので来月から始まるワールドバーレスクゲームズ(今年度のロンドンバーレスクウィーク、オリンピック仕様)に期待だなぁ。