Fiona Ritchie and Peter Sabor ed., Shakespeare in the Eighteenth Century

 Fiona Ritchie and Peter Sabor ed., Shakespeare in the Eighteenth Century (Cambridge: Cambridge University Press, 2012)を読んだ。

 

 とりあえずこれ一冊で18世紀のシェイクスピアのことはほとんどわかるというくらいあらゆるジャンルをカバーした論文集なので非常にオススメ。まだざっと通読しただけなのだが、英国内だけでなくフランス革命との関わりやドイツでの受容などについての論文も収録されていて大変広い分野に目配りした論集となっているし、最後の文献リストや資料集も非常に役に立つ。あと個人的にはオペラ受容に関する論文は知識が足りないところなのでこれから勉強しないとなと思った(今年のグラインドボーンパーセルの『妖精女王』やるらしいんだけどチケット代が高くてなぁ…)。ただ、残念なのはこの分野の第一人者であるはずの編者二名の書いた論文が(前書きだけで)収録されていないこと。

 一番問題なのはアーデン版Double Falsehood Or The Distressed Lovers の編者であるブリーン・ハモンドの論文かなぁ…この芝居についてはこちらこちらのあらすじ・来歴紹介を見ていただきたいのだが、簡単に言うとこれはシェイクスピアの失われた戯曲と呼ばれているが本当にそうだか決着がついていないというシロモノである。ハモンドは相変わらずこれがシェイクスピアの真作の翻案だと思っているようなのだが、これのもとになったというルイス・ティボルドの手稿がホンモノでティボルドのでっちあげでないとしても、手稿自体がシェイクスピアの芝居のテクストだったという証明にはならないと思うのでかなり議論が弱いなあと感じた。