RSCロンドン公演難破三部作(3)『テンペスト』〜プロスペローとエーリアルが瓜二つ!

 ラウンドハウスでRSCの難破三部作最終作『テンペスト』を見てきた。セットは前二作とだいたい同じなのだが、右後方にディスカバリースペースのかわりとして大きな鏡の箱みたいなのを設置して魔術絡みの演出で使用しているところ(照明をあてると中が見えるのだが落とすと中に入っている人が見えなくなる)、左前方の水場をほとんど使わないところが違う。演出はデイヴィッド・ファー。

 このプロダクションの特徴はプロスペロー(ジョナサン・スリンガー)とエーリアル(サンディ・グリアソン)が同じスーツを着ていて背格好も同じでまるで双子のようにそっくりだということである。この2人が舞台上でのいろいろな妖精の動きやらなんやらを操っているのだが、舞台奥に引っ込まれるとどっちがどっちなのか全然見分けがつかない。プロスペローは不機嫌で追放の苦しみを未だに引きずる荒っぽい魔法使いなのに対して、エーリアルはもうちょっと空気の精らしく明るく軽やかなのだが、この2人は最後まで陰と陽のように互いを補う関係で、プロスペローがエーリアルと別れて島を去るところには他の『テンペスト』にはない独特の余韻があってとても良いと思った。

 演技はみんなとてもよかったと思う。スリンガーとグリアソンはもちろん、ミランダ役のエミリー・ターフェのミランダがいかにも人里離れたところで育った妖精のような野生児って感じで『十二夜』のヴァイオラよりも『間違いの喜劇』のルシアナよりも全然こっちのほうが似合っていると思った。ショートパンツにキャミソールみたいな格好で海辺を走る様子は『十二夜』よりも男の子っぽくて超可愛かった。あとトリンキュロー役のフェリックス・ヘイズがあからさまに「ゲイの水兵さん」でステファノーに惚れており、最初何このステレオタイプと思ったのだが、よく考えると原作でもトリンキュローはステファノーに比べてキャリバンを信用していないみたいな雰囲気があるので、ゲイ設定だと「ああ、ステファノーが好きだからステファノーがキャリバンと仲良くしているのが気に入らないんだな」ということがありありとわかって実はかなりいいかもと思ってしまった。そう言われるとキャリバンとトリンキュローが難破のあと四つ足状態?になって見つかるところもちょっとゲイっぽいし…あとこの上演ではセバスチャンが女なんだよな。しかし女でも全然ヘンだとは思わなかった。

 こんな感じで、難破三部作の中ではこれが一番良かったように思う。ただ、私の趣味だけど『テンペスト』の途中のマスクっていらないよね。あれはルネサンスの観客の趣味にあわせたものなので、今やるんならなんかもうちょっとアップデートするかカットしたほうがいいんじゃないかっていう気もする。