エディンバラフリンジ(1)クィア・フェミニスト・バーレスク'Alternative Sex Education'(代替的性教育)〜技術的には相当ひどいが、いいところもたくさんある

 さてさてエディンバラフリンジ1本目。本当はシェイクスピアを見に行こうと思ったのだがチケットが売り切れてしまっていたので、ボンゴクラブにてクィアフェミニストバーレスクと銘打っている'Alternative Sex Education'(代替的性教育)を見た。

 これはバーレスクと銘打っているがストリップティーズはなく、もうちょっと古典的な意味である「戯作」のほうのバーレスクに近いショーで、女性たち(一人だけ主に女装している男性がいる)が歌ったりコミカルなスケッチをやったりモノローグで話したり踊ったりする諷刺レビューである。テーマは包括的性教育の推進、セクシャルマイノリティの人権侵害反対、異性愛中心主義批判などかなり政治的なもの。アマチュアで演芸をやっている人たちの演目のようで、たぶん意識的にいろんな体型とか服装の女性を集めている。

 で、最初はパフォーマーたちの歌があまりにもヘタすぎてどうなることかと思ったが(キャメロンとクレッグに扮して歌う'Stand and Deliver'の替え歌とか、シュプレヒゲザングのとこがあまりにもヘタでサビになるまで何の歌だかわからなかった)、スケッチはけっこう政治的メッセージをうまいこと面白可笑しく簡潔に伝えていて笑えるし、パフォーマーの真剣さには心が打たれるとこもあった。とくにSFやファンタジー作品の異性愛中心主義とか階級の表現をこまごまと皮肉るスケッチ集が非常にオタクな女子の心をくすぐるものだったな…スターウォーズハリー・ポッタードクター・フーなんかには結構愛情のある諷刺をしているのにトワイライトには全く愛情の感じられない辛辣な諷刺をしているあたりがツボだった。あと、セクシャルマイノリティの歴史を五分くらいで先生が生徒に歌とパラパラ模造紙を使って説明する、という設定のスケッチもなかなかコンパクトで良かったと思う(「アジアの話がないなー」と思ったら「ゴメン時間と知識の関係でこの歴史すげー西洋中心的なの、でも少しだけ説明する」と謝って非西洋圏についてちょっと触れるあたりとかも良い)。

 そういうわけで、歌とかいらんからもっと面白可笑しい諷刺スケッチを増やしたほうがいいんじゃないかと思う。なんというか歌はある程度心情の吐露として必要なのかもしれんが、それって他人の歌にのせないでモノローグでも結構できるのでは、と思うのである。