Katherine West Scheil, The Taste of the Town: Shakespearean Comedy and the Early Eighteenth-Century Theater(キャサリン・ウェスト・シェイル『街のお好み――シェイクスピア喜劇と18世紀初頭の演劇』)

 The Taste of the Town: Shakespearean Comedy and the Early Eighteenth-Century Theater(Bucknell University Press, 2003)を読んだ。Bucknell Studies in Eighteenth-Century Literature and Cultureシリーズのひとつ。

 王政復古末期〜18世紀初頭までのロンドンの舞台でシェイクスピア喜劇がどう翻案されたかを分析するもので、あまり分析されないような芝居を丁寧に分析したり、いろいろな一次史料を掘り出してきている。シェイクスピアをとことん「翻案の材料」という視点から初期の受容史とその中でのシェイクスピアの位置づけやロンドン演劇界の趣味の変遷を調べる、という点では読む価値のある研究書。Barbara MurrayのRestoration Shakespeare: Viewing the Voiceなんかを読んだ後で読むとだいぶわかりやすいかもしれないと思うのだが、この本よりも音楽劇などにたくさんのページを割いているあたりが特徴かな。

 ただ、趣味の変遷を強調するあまりちょっとシェイクスピア王政復古期における人気を過小評価しているきらいがあるように思ったのと、「趣味の変遷」がテーマのわりには観客論よりも戯曲分析にたくさんのページを割いているところが若干物足りないかもしれない。王政復古の観客論(とくにジェンダー関連)って割合充実しているように思うので、そのへんをもうちょっとふまえてたくさん書いても良かったのでは…という気がする。