サドラーズ・ウェルズ、ニュー・アドヴェンチャーズ振付家賞ショーケース〜村上春樹で爆睡

 サドラーズ・ウェルズ劇場でマシュー・ボーン率いるニュー・アドヴェンチャーズが出している振付家賞の受賞記念ショーケースを見てきた。

 この賞はボーンの50歳の誕生日に友人たちがプレゼント(!)として企画したもので、とりあえずボーンの知り合いからお金を集めまくって若手振付家のための賞を作り、受賞者はニュー・アドヴェンチャーズで一年間振付から予算のマネジメントまでダンスエンタテイメントのあらゆる側面を学べる、という奨学金的な賞らしい。受賞者はジェイムズ・カズンズ、ランナーアップがトム・ジャクソン・グリーヴズで、一年間の訓練の賜物としてサドラーズ・ウェルズでデビュー公演をする。

 …で、正直うちが一番面白かったのはランナーアップのトム・ジャクソン・グリーヴズのVanity Fowlという演目だった。これはビデオと本人のソロダンスを組み合わせてシャイな若者の社会生活上の苦楽をスケッチふうに描くというもので、ストーリーが一応わかるしユーモアもあり、キャンプテイストもふんだんに詰め込まれていて良かった。とりあえず笑えるというのは大事だ。

 で、ジェイムズ・カズンズのやつは正直けっこう辛かった。一番きつかったのは'There We Have Been'というデュエットのやつで、暗いとこで男女がいろいろあり得ないようなテクニカルな動き(空中?でもたれかかったり支え合ったり)をいっぱいしているむずかしいダンスで正直わたしは全然よくわからなくて寝てしまった…あとでわかったことによるとこれは村上春樹の『ノルウェイの森』をモチーフにしていたらしいのだが、うちはどうもとことん村上春樹がダメらしい。何かすごいクリエイティヴなことをやってるらしいのはわかるのだが、なんかそもそも私は暗いところで男女がいちゃいちゃしてるだけの話にはあまり興味が無い。

 で、一番面白かったのは途中でマシュー・ボーンが出て来て若手支援のためポッシュな人々や同業者から寄付を搾り取ろうと捨て身のお金くれコールをしたところ。なんでも最初の寄付金は全て1回目の賞で使ってしまったそうで、来年出す予定の賞のためのお金が全くないので、とりあえず招待券でチケット代払ってない人はどうかどうか寄付してくれ!ということで、その場で携帯電話をお客さんに出させてテキストメッセージで寄付する方法を講義。「今すぐ'send'ボタンを押して下さい!」とかあのマシュー・ボーンが冗談めかして言うところがなんかかわいいというかおかしかった。

 ちなみに招待券で来た人が多かったからかなんかお客さんの態度がけっこうイマイチで、隣の人が上演中で臭いサンドイッチを食い始めた時はもう本当にびっくりした。信じられない…バレエだぞ…

 しかしながらボーンが言っていたように振付というのは重要なのに非常に陽の当たらない分野なので、こういう若手支援のプログラムが継続的に行われることは大事だと思う。みんな寄付してあげてください!ボーンがやっているダンス教育のプログラム、Re:Bourneに寄付の受け付けとか少し書いてある。