英語デビュー論文がやっと刊行されました

 私の英語デビュー論文がやっと刊行されて手元に届きました。

Kitamura Sae, 'Queens, Girls. and Freaks: Men in Women's Clothes and Female Audiences in Japanese Cross-Dressing Productions of As You Like It and Hedwig and the Angry Inch'. In Silvia Antosa, ed. Queer Crossings: Theories, Bodies, Texts (Mimesis, 2012). 161-78.

 またイタリアアマゾンにしかないようですが、ミラノのミメシスというちっちゃい学術出版社から出ています。

 一昨年パレルモで開催されたQueer Crossings学会のプロシーディングズで、日本語論文である「おネエと女とフリークス――『お気に召すまま』と『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』」を英語にし、博論の予備調査などを足して若干充実させたものです。どうってことない小さい論文ですが、初めての英語論文がイタリアから出たというのはなかなか嬉しいものがあります。

 基本的には日本語論文同様、成宮寛貴が女装した『お気に召すまま』と山本耕史が女装した『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の舞台を比較検討することで女性観客が男性の異性装をなぜ好むのか仮説を提示しよう…というものですが、やはり仮説の提示のみにとどまってしまってそれ以上いかないのがもどかしいところ。仮説をいくつか出し合って検討するだけで結構なことがわかるはずなんだけど、実際に確かめるにはちょっとお金も時間も人員も全く足りないという…

 あと、前の論文と違うのはイギリス・ルネサンスの少年俳優についてちょっとだけ書いたのと、ジュディス・バトラーについての分析を増やしたところ。ただバトラーについてはあの「なんとなく読み手の知識に暗黙的に頼って世界劇場(theatrum mundi)の比喩で自分の論理を理解させようとするわりにはアンチシアターな感じ」にもっとツッコミたかったのですが、クィアセオリーに正面からつっこんでいくと人生が終わるまで書き上がらない可能性があるので諦めました。

 …あと、今やってる森山未來版のヘドウィグの演出がかなりひどいっていう話をきいたんだけど大丈夫なの…?なんかいい噂を聞かないんだけど。

 イタリアの本ということで入手がイタリアアマゾン経由だけになってしまうため、もしどうしても論文が欲しいという方がいらっしゃいましたらスキャンしたpdfをお送りいたします。