ローズマリー・ブランチ・パブシアター『ロミオとジュリエット』〜意欲は買うが結構イマイチ

 ローズマリー・ブランチ・パブシアターで『ロミオとジュリエット』を見てきた。前半はさっぱりダメだったのが後半かなりよくなった…ものの、全体的には意欲が空回りしたところが多かったように思う。

 とりあえず主役の2人は若いけど生き生きしていて悪くないし、狭い空間と少ない予算、少人数で一人複数の役をとっかえひっかえこなしつつ精一杯やりくりしてできるだけスピーディに仕上げようという演出の方針が成功したところはたくさんある(とくに後半)。乳母がジュリエットに「ロミオは死んだと思ってパリスと結婚しろ」というところはお笑い風に演出する場合も多いと思うのだが、このプロダクションでは乳母が本当にジュリエットのためを思ってギリギリの判断でそう言っている、その思いやりがジュリエットを追い詰める、みたいなつらい感じがとてもよく出てたと思う。最後にロミオがパリスを殺すところも、ロミオは自分の剣すら抜かないのに自暴自棄になったパリスが剣を抜いてきて、ロミオがひょんなことからパリスの剣を奪おうとして刺してしまう、みたいな演出で、とことん気が優しいのにもめ事に巻き込まれやすいロミオの性格がよく出ていたと思う。恋人同士が死ぬ最後の場面とかも良かった。

 しかし、全体的にはちょっと結構良くないと思うところが多かった。とにかくスピード感のある演出で若者たちの生き生きとしたやりとりを流れで見せようという心意気はいいのだが、あまりにもスピードを重視しすぎて台詞、とくに韻文の台詞のやりとりが早いだけで一本調子になっているところとかが少しあったように思う。また、一人の役者が何役もやるということで入れ替えが難しいのはわかるが、とくに前半、一度にたくさんの役者が出るところは入退場がごちゃごちゃ、ばたばたしていて見苦しいところが少しあった。カットの仕方はだいたいはいいのだが一箇所だけ、薬屋の場面をほぼ全部残したのはなんでだろう…と思った(この人数でやるなら薬屋は出さなくていいのでは?)。それからずーっと背景に音楽が流れっぱなしなのは非常に疲れる。ただでさえ台詞の密度が濃い芝居なので、要所要所しか音楽はいらないと思うな…この音楽の使い方は「意欲的すぎて裏目に出た」典型例のように思った。

 と、いうわけで、後半は非常に楽しめたがかなり不満も多い上演だった。ただ、このパブはかなり雰囲気がいいし食べ物も美味しそう。ショアディッチの運河脇でパブシアター以外何もないようなところなのだが、そのぶん地元民の支持がある感じだったので、もしまた行く機会があれば食べ物を試したい。