新しいオクスフォードの初期近代テキストデータベースOxford Scholarly Editions Online

 本日はオクスフォードから出たばかりの新しい初期近代テキストデータベースOxford Scholarly Editions Onlineのご紹介。

Oxford Scholarly Editions Online

 1485年から1660年までのcanonical(正典的、古典的)な英語を使う作家のテキスト及び注釈を収録したもので、演劇・詩・散文の三ジャンルに分かれている。テキスト全文検索がかなり強力なのとオクスフォードのお墨付き注釈が入っているのが利点なのだが、欠点は本当にcanonicalな作家、オクスフォードクラシックスに入っているような作家の作品ばかりで、結構学者の間で有名な作家でもオクスフォードから出てないようなものは登録されていないこと。例えば女性作家で入っているのはアン・コンウェイとキャサリン・フィリップスだけで、メアリ・シドニーエミリアラニエ、メアリ・シドニー・ロウス、ルーシー・ハッチンソン、エリザベス・ケアリなどが入ってない。あと、最近よく研究されているペラペラの宗教チラシみたいなのも入ってないので、そういうもんを見ている英文学者や歴史家が使うにはまだまだ発展途上な感じがする。

 将来的にはラテン語の文書から20世紀のものまで、オクスフォードの出している注釈つきテキスト全部を収録するのが目標らしい。初期近代の刊本データベースとしてはEEBOがあるのだが、EEBOは特定の時代に出た本を網羅的に電子化しているのが特徴でモダンエディションが出てないものでもここにアクセスすれば手に入るというのが利点なので、Oxford Scholarly Editions Onlineはそれとの棲み分けを狙ってクリティカルエディションで広い時代のものを…という方針なのかな?

 Canonicalな作家を網羅ということで、もちろんシェイクスピアは入っている。シェイクスピアだけのデータベースだとShakespeare Collectionというアーデン版の注釈を全部ぶちこんだやつがあるのでそれとの棲み分けも大変そうだと思うのだが、とはいえオクスフォード版シェイクスピアの注釈とアーデン版の注釈を全部オンラインで比較できるというのはかなりシェイクスピアリアンにとっては便利である。

 まだまだ収録テキスト数が少ないので使い勝手はやや疑問があるが、今後発展して収録テキスト数が増えるというなら期待したい。

 ちなみに歴史家が使う初期近代文書データベースとしては政治文書(手稿類)を集めたState Papers Onlineがあるのだが、こいつは1714年までの一部分しかカバーしてなくてその他はまだ入ってない。これ、早く全部State Papersを入れてほしいのだが…拡張の予定はないのかな?