「時代もの」のミュージックビデオを集めてみた

 突然だが、昨日書評した本に関連して、「時代もの」の主要なミュージックビデオを集めてみた。つまり、ビデオが作られた時代以外の時代をテーマにしているビデオっていうこと。ジャンルは主にロック。

○古代
 全く思いつかない。なんかあります?

○中世
 この時代を舞台にしたミュージックビデオって意外にない。なんといっても着てるものが地味だしそのわりに手間がかかるしなぁ…中世ファンタジー映画のテーマ曲とかが多くて、あとはほとんどフォークメタル。どっちみちすごいファンタジー風味で所謂「中世」っぽくはないものも多い。

ディオ、'Holy Diver'(1983)

 中世ファンタジーふう。

コルピクラーニ、'Wooden Pints'(2003)

↑やる気はわかるが、予算かかってなさすぎだろ…

クイーン、'Princes of the Universe'(1986)

 『ハイランダー』のテーマ曲。

ブライアン・アダムズ、'(Everything I Do) I Do It for You'(1991)

 『ロビンフッド』のテーマ曲。

 
 ちなみに中世ものでロックというと、映画だけど『ロック・ユー!』でデヴィッド・ボウイの'Golden Years'の場面は傑作ですな。


ルネサンス〜初期近代
 この時代も意外にないような感じがする。まず、中世とあまり区別がつかないという問題が…

 ↓ただ、これはたぶん時代ものミュージックビデオの中でも飛び抜けて気合いが入ってる。
Men Without Hats, 'The Safety Dance'(1983)

 全面ロケで中世末期〜初期近代イングランドの五月祭を再現。道化に人形劇にモリスダンスにメイポールと、イングランド人が考える民俗まつりネタが満載で、若干安っぽいけどすごい頑張ってると思う。歌の内容はクラブでポゴダンスをやめさせようとする世相を皮肉ったものだそうな。

 イタリアルネサンスを舞台にしたのってあります?


○18世紀
 この時代は舞踏会とか見栄えがするので結構いっぱいある。

アダム&ジ・アンツ、'Stand and Deliver'(1981)

 18世紀の追いはぎがテーマ(曲タイトルも18世紀の追いはぎのセリフ)。若干アナクロニズムが取り入れられている。

ジャミロクワイ、'King for a Day'(1999)

アニー・レノックス、'Walking On Broken Glass'(1992)

 『危険な関係』や『ブラックアダー』第四シーズンをモチーフにしてるらしい。

アッパー・クラスト、'Let Them Eat Rock'(1995)

 バンドのコンセプト自体が「18世紀」なのでビデオも当然そうなる。

エリック・サーデ、'Masquerade'(2010)

 仮面舞踏会。身分違いの悲劇の恋の話。

変わり種で、マドンナの'Vogue'別ヴァージョン。

 あとゴシック系のビデオもたくさんあるのだがあのあたりは時代設定が微妙なので…


○19世紀
 ヴィクトリアンかと思ったら、意外と西部劇が多い。

ポール・マッカートニー&マイケル・ジャクソン、'Say, Say, Say'(1983)

 19世紀末あたりのアメリカが舞台だと思うのだが、ミンストレルショー+マウンティバンク(大道薬売り)が登場する、文化史家には非常に興味深いビデオである。マウンティバンクは中世からある職業だが、よくわからないという人には私はいつもこのビデオを使って説明する。

カルチャー・クラブ、'Karma Chameleon'(1983)

 1870年のミシシッピが舞台。『ショウボート』の世界ですな。

アイアン・メイデン、'Run to the Hills'(1982)

 曲自体がたぶん19世紀頃の白人とネイティヴアメリカンの戦いを描いた作品で名曲なのだが、ビデオはほぼ演奏でちょっと古いサイレント映画フッテージみたいなのが入ってる程度。

ピンク、'Trouble'(2003)

 所謂修正主義的西部劇。っていうかこれ、今気付いたんだけど『アヴェンジャーズ』のホークアイ(ジェレミー・レナー)が出てんのな!

ミューズ、' Knights of Cydonia'(2006)

 ↑これ、一応19世紀っぽい西部劇なのだが設定的にはポストアポカリプティックでオルタナティヴ西部ものというかWeird West系なので正確には19世紀と言えないかも。

Little Lapin, 'Silent Tears'(2012)

 ヴィクトリアンなものって意外と見つからなかったのだが、この曲は古いフッテージとかデザインがヴィクトリアンかな。

○20世紀における過去
ノー・ダウト、'It's My Life'(2003)

 1930年代ですな。

マドンナ、'Sooner or Later'(1990)

 これも1930年代。映画『ディック・トレイシー』から。

クリスティーナ・アギレラ、'Candyman'(2007)

 1940年代、第二次世界大戦の兵士。

ウィーザー、'Buddy Holly'(1994)

 1950年代。

Ming Tea, 'BBC'(1997)

 1960年代。オースティン・パワーズのテーマ曲。

ビースティ・ボーイズ、'Sabotage'(1994)

 1970年代の刑事ドラマ。

ヒュー・グラントほか、'PoP! Goes My Heart'(2007)

 映画『ラブソングができるまで』から。ものすごい1980年代臭。

 さすがに90年代をテーマにした時代ものは見つからなかった。しかし、とりあえず80年代までなら「時代もの」として成立する。