スパイスガールズの音楽を使ったジュークボックス・ミュージカル『ヴィヴァ・フォーエヴァー』〜台本も演出もたいがいひどいのでいかなくてよし

 スパイスガールズの音楽を使ったジュークボックス・ミュージカル『ヴィヴァ・フォーエヴァー』をピカデリー座で見てきた。台本も演出もたいがいひどいのでいかないほうがいいと思う。

 とりあえず、まず台本がひどい。設定は現代で、Xファクターとか音楽コンペティションリアリティ番組をパロっているのだが、このパロディが非常に気の利かない陳腐なものでおっそろしくテンポが悪い上、そもそもスパイスガールズの音楽はすごく90sなのでこれを2012年のアイドルグループが歌うと思うと何か時代的にもおかしい。第一部はガールズグループ「エターニティ」が『スターメイカー』という音楽コンペティションショーで予選を勝ち抜くが、リードヴォーカルのヴィヴァしか本選に参加できないことになる…という展開なのだが、30分くらいでできそうな単純な話を一時間もかけてやるのではっきり言って眠い。第二部はまあもうちょっといろいろ話があるのでそこまで眠くはないのだが、それでもなんだかねぇ…っていう気の利かない話が展開する。とりあえず歌の趣味にもあわないし話としてもつまらん話がダラダラ展開するので全くもう…

 あとジョークの趣味もねぇ…一番面白いジョークは、スペイン出身だとみんなから言われているアシスタントが「俺はスペイン人じゃない、カタルーニャ人だ!」って怒るとこだったよ。言ったらわかる?

 あとそもそもコンセプトに無理がある。というのもスパイスガールズのキャリアって以外と短くてアルバム三枚しかないので、『マンマ・ミーア』とか『アクロス・ザ・ユニバース』みたいに全ての曲が大ヒット曲で絶対聞いたことがある、ということにはならない。正直、私第一部で覚えがある曲が'Stop'と'Say You'll Be There'の二曲だけで、あれ私って実はぜんぜんスパイスガールズの曲きちんと聞いてなかったんじゃないか…と心配になったのだが、劇評を読むとどうもチャールズ・スペンサーもガーディアンのアレクシス・ペトリディスも「いやこれヒット曲少なすぎだろ」みたいな話をしているので、どうやらイギリス人も「あれこの曲なんだっけ」みたいな感じだったらしい。第二部は'Who Do You Think You Are'、'Spice Up Your Life'、'Viva Forever'、'2 Become 1'、'Wannabe'と覚えのある曲が結構続いてマシになるのだが、アルバム三枚でミュージカルにするのは相当厳しい。

 まああと演出と演技がかなりひどい。役者のキャラが全く立ってないのはどうしようかと思った…のだが、たぶん役者よりもキャスティングと演出の問題だと思う。スパイスガールズは歌はうまくなくてもとにかくキャラが立っていて、しかも英国の女子なら五人のうちの誰か一人には必ず親近感を持てそうだ(+そういうそこらの女の子が超ポップなメロディにのせて今までのメインストリームのガールポップにはなかったような女の友情とか性欲とかに関する下世話なガールトークを繰り出す)、というのが売りだったはずなのだが、キャラが非常にのっぺりしていて、かつもとのスパイスガールズにあった若干のキッチュな女子オタク風味というか妄想暴走女子風味がない優等生になっていて全然おもしろくない(なんていうか、スパイスガールズでバックステージものを作るならどうせならショーガールドラァグクイーンがドサ周りするみたいな話のほうが面白そうだと思わない?)。

 と、いうわけで、スパイスガールズが好きならこのショーを見に行くより家でYouTubeを見てたほうが楽しいと思う。'Wannabe'とかのビデオはもう伝説的だが、'Spice Up Your Life'とかもガールズグループがB級SFで戦うとか女子オタクな風味があっていいよ!