『イギリス映画と文化政策――ブレア政権以降のポリティカル・エコノミー』

 『イギリス映画と文化政策――ブレア政権以降のポリティカル・エコノミー』(慶應大学出版会、2012)を読んだ。

 

 けっこう期待して読んだのだが、正直期待したほどおもしろくなかったかも…舞台とかオリンピックに関する論文は結構興味深いと思ったのだが、タイトルになっている映画関係の論文がいまいちどれもはっきりしないというか、わりとよく見かけるようなことを論じていて新鮮味が少なかったり、あるいはあまりにも分析が図式的で「それはないだろ」みたいな感じだったりした。

 とくに個人的に全く解せなかったのは『リトル・ダンサー』がケン・ローチの『ケス』に比べると新自由主義的である、という話を英語圏の論文からひいてきてそれと『ダロウェイ夫人』なんかに見られる強かな現状への抵抗ぶりとかを比べる、というのがコラムと論文両方にあるのだが、いやケン・ローチに比べればほとんどの映画は新自由主義的だと思うから比較がおかしいと思うし、『リトル・ダンサー』が新自由主義的だっていうんなら昔からめんめんとある「田舎の若者が都会に出て行って成功する」話は全部新自由主義なのかよと思うし、むしろ『リトル・ダンサー』は古典的な芸道もののクリシェを意識的に真似てるんだと思うんだけどそういう昔ながらの大衆向けエンタテイメントの伝統を無視するのどうなのとも思うし、まあ全く納得できなかった。しかしながら一番納得できなかったのはたぶんビリー・エリオットネオリベならば私自身の生き方がネオリベであると言われたのも同然だ、と思ったからだと思う。田舎からら自分の手足だけを頼りに都会に出て行って奨学金をもらうのはネオリベなのかい!そうかいそれはよかったね!!