小宮友根『実践の中のジェンダー−法システムの社会学的記述』〜非専門家にはかなりむずかしい

 小宮友根『実践の中のジェンダー−法システムの社会学的記述』(新曜社、2011)を読んだ。


 
 一言でいうと、非専門家で社会学とか全く勉強したことない者にはかなりとっつきにくい本であるという印象を受けた。以前紹介した森山さんの『ゲイ・コミュニティの社会学』でもそう思ったのだが、最初の二章ぶんくらいがごっそり理論(タイトルが「実践」なのに)で、(わりと分野を問わず読まれているバトラーはともかく)聞いたこともないような社会学の理論がえんえんと出てくるのはなかなか初学者にはつらいものがある。初学者には「この後この理論がどう何につながる」という見通しがないのが読んでいてつらい大きな理由だと思うので、もうちょっとイン・メディアス・レスみたいな書き方(具体的な事例でフックにする→理論→事例にもどる、みたいな)をしてもらえると初学者でも読みやすいかもと思うのだが、まあこういう構成はジェンダー社会学っていう分野の特性としてしょうがないのかもしれん。

 後半は性暴力とかポルノグラフィとか事例の話になってややわかりやすい。あとこの本で一番おもしろいと思ったのは、バトラー的な「ジェンダーには本質的根拠がない」という発想は別にそれだけでは記述的な分析であって「本質的根拠がない」ことを善悪なんかの価値判断には直接結びつけられない、というようなことを最初のほうでわりと触れており、全編にわたってできるかぎり記述的な分析をしているところで、ここは非常に納得できると思う。