破壊活動するグウィネス・パルトロウの圧倒的な可愛さとイエローフェイスの圧倒的な問題〜『アイアンマン3』(若干ネタバレあり)

 『アイアンマン3』を見てきた。なんか敵のもくろみがしょぼいとかアクションの展開が若干ごちゃごちゃしている、かつどっかで見たことあるような気がするとか、全体的なまとまりや編集のうまさの点でシリーズ第一作の『アイアンマン』や『アベンジャーズ』には及ばない感じだったと思うのだが、とはいえアクションコメディとして明らかに一定水準はクリアしていると思うし、何しろロバート・ダウニー・ジュニアの芸達者ぶりを安心して楽しめるというところがあるのでまあ満足である。ただ、スーパーヒーローが前回の活躍の結果精神的トラウマをくらって健康問題で…っていうのはいいかもしれない。トニー・スタークはかなり健康に問題があるスーパーヒーローだと思うのだが、こういうくずれた感じの中年の伊達男の弱点が健康問題で…っていうのはなんというかやけにリアルで心をくすぐるものがあるし、ものすごくタフに仕事をして自分では頑丈なつもりが実は精神的に疲弊して過労気味で…というのもなんか身近にけっこうあるのではという気がする。

 しかし、圧倒的に問題あるなと思うところが一カ所ある。全体的に敵の造形がちょっとおかしいというか、あのオタクの科学者ガイ・ピアースを悪者にするのはどうなんよっていうのと(いじめられっ子でメカオタクのハーレーが重要な役柄として出てくるのはたぶんオタクをセクハラ野郎の殺人犯ということにして終わらせちゃうのはこの映画の支持層からして良くないと思ったからだろうが)、植物学者のキャラが意味不明じゃないかっていうのもあるのだが、1番問題あるのはベン・キングズレーのマンダリンである。私、原作を読んでないのでマンダリンはどういう人なのかとか全然知らないのだが、少なくとも映画を見てても中国系だってことはわかるので(原作設定によると母がイングランド人、父がチャイニーズだそうな)、この役をインド系英国人のベン・キングズレーがやってるっていうのはものすごく違和感があるというかはっきり言って差別的じゃないか…?おそらく今の世の中で悪役をチャイニーズにするっていうのは問題があるので、インド系英国人に演じさせてしかも途中の「マンダリンは当て馬でした」っていう展開を入れるっていうことになるんだと思うのだが、はっきり言ってかなり問題あるイエローフェイス(白人俳優に化粧させて東アジア系を演じさせること)だと思ったので、こんなことするならマンダリンの出番は全部なくすか、あるいはマンダリンを本気ですごいメカも使える(かつ同情心もちょっとそそるような)悪役とかにして中国系の野心的な役者にやらせるとかしたほうがよかったのではと思う。『クラウド・アトラス』もひどかったし個人的には『ハングオーバー』のあのチャイニーズのおっさんについても腹が立ったのだが、ハリウッドの東アジア人表象が全然進歩してないのはちょっともうどうにかしてほしいよね。うちもUKに住んでチャイナタウンで映画見るようになるまではこういうこと全然気にならなかったんだけど、ここ三年くらいですごい気になるようになったわ。


 ただ、圧倒的に気に入ったところも一カ所ある。それはグウィネス・パルトロウが行う各種破壊活動である。第二作まではトニーの添え物みたいだったペッパーだが、本作では明らかにスターク社のマネジメントとかPRはペッパーにやらせたほうがやっぱりうまくいくんだよ感が強くあり、仕事が好きな男女の結婚してない関係がなかなかよく描かれていたように思うのでまあそれもよかったのだが、本作ではひょんなことからペッパーがアイアンマンのスーツを着て動き回ったり、最後にちょっと強化されてしまったペッパーが暴れたりするところがあり、こういう破壊活動を行っている場面のペッパーが異常に可愛いというかなんというかまあとにかくいいのである。なんなんだこのおとなしく分別ある女子がキレた時の迫力とその後の戸惑いの絶妙な感じは。ペッパーにはもっとこうやって暴れてほしい!んだけどこのシリーズは一応ここで打ち止めなんだよねぇ…アベンジャーズの次回作ではペッパー暴れないのかなぁ… 


 最後にもうひとつ付け加えておきたいのが、港湾や橋での落下を用いたアクションはもう結構飽きた、ということである。ロバート・ダウニー・ジュニアが川の上の高所で格闘するって、それもう『シャーロック・ホームズ』のタワーブリッジのクライマックスで見たし、『ザ・ガード~西部の相棒~』ではドン・チードルが港湾で格闘するクライマックスも見たぞ…正直、『アイアンマン3』のクライマックスの格闘場面はこういう主演二人の先行作を思い出してしまってあまり新しさがなかった。