国立新美術館「貴婦人と一角獣」展〜オーパーツかと思うほど精巧な中世フランスのタピスリー

 国立新美術館で「貴婦人と一角獣」展を見てきた。

 これはパリのクリュニー中世美術館から借りてきた六面の大作タピスリー「貴婦人と一角獣」を真ん中の部屋に堂々と展示し、周りはそれに関する映像解説や、デザインや技術の点で関連のある他のタピスリーや本、解説パネルなどで固めてこの中世フランスのタピスリーの魅力を味わってもらうという企画。とにかくこの大作ひとつにしぼってそれをとことんわかりやすく解説するということで、中世美術になじみのない私でも大変楽しめた。

 まずタピスリーが大変魅力がある。とにかく大きくて迫力がある作品だというのはもちろん、出てくる女性はラファエル前派ばりのモダンな顔の美人だし(まあラファエル前派が真似したんだろうけど)、そこここに織り込まれているイヌやウサギなどの動物はめんこいし、貴婦人の着るものや花(ミルフルール)の細密描写もすごい。これを織り上げた15世紀末のフランスのデザインと織物技術にはまったくびっくりする。これはオーパーツです、宇宙人が中世フランスに残した高度な文明の遺物ですとか言われても信じるレベルに現代的なデザイン感覚と高度な織物技術だと思った。これだけ大きくて神秘的な作品だとやはりこの作品の解説を読むだけでお腹いっぱいになってしまうので、あまり細かい展示品をたくさん出さないでタピスリーに関係ある補助展示だけ出すという方針は成功していると思う。

 とくに魅力があったのは「聴覚」のタピスリー。六面のうち五面は五感をテーマにしているらしいのだが、「聴覚」のタピスリーはまるで音楽が聞こえてくるようで、共感覚者の方にも大変おすすめ。皆はどういう音楽が聞こえてきたかな?