ドキュメンタリーというか、ただの資料集〜『ノーコメントbyゲンスブール』

 ル・シネマで『ノーコメントbyゲンスブール』を見てきた。時系列とあまり関係ない編集で、基本的にはセルジュの発言と映像を淡々と時系列を結構無視してつないでいき、時々新しい映像が入るというもの。

 最初はセルジュのロシア系ユダヤ人としてのアイデンティティとか醜男というコンプレックスのせいでミソジニーをこじらせた話とかが出てきていて面白いし、魅力的だが信用できない語り手としてのセルジュのショーマンシップがうかがえるのだが、起伏がないしところどころ入るイメージ映像みたいなのもなんか気取った感じで私の趣味ではなく、はたまた歌うシーンがそんなに多くなく物足りないのもあいまって途中で意識が何度かなくなりかけ、気づいてたら終わってたという感じに…なんというか、こういうミュージシャンの話をひたすらつなぐだけのドキュメンタリーって私は好きじゃない。というのも、既にそのミュージシャンのファンである人とか音楽史に興味ある人とかにはそれでもまあいいだろうが、そうでない人にはいったいセルジュがどういう人でフレンチポップス史上でどういう位置づけなのかとかいうことが皆目わからんだろうと思うからである(『カート・コバーン アバウト・ア・サン』とかかなりひどいよね)。まあ、私は「自分はプロパガンダやってます!」みたいに自覚的でけっこうはっきりしたメッセージのあるドキュメンタリーのほうが好きなので、好みの問題だと思うんだけど。

 ただ、「ボニー&クライド」のビデオ撮影中のセルジュとブリジット・バルドーのメイキング映像とかはすごくカッコよかった。