久しぶりにヒロインが勝つスポ根映画〜『タイピスト』(タイトルがネタバレです)

 『タイピストを見てきた。1950年代末のパリを舞台に、当時数少ない女性が活躍できる仕事であった秘書を目指してパリにやってきた不器用な娘ローズが上司のルイにタイプ早打ちの技術を見込まれ、選手権に出場する…というもの。宣伝では50年代末ふうのポップでレトロな雰囲気が強調されてるのだが、中身はスポ根コメディである。

 スポ根ものとしてもロマンティックコメディとしても展開はものすごくベタで、セリフのつながりなんかもゆるい感じ。ルイがいきなりローズを家に住まわせてタイプの鬼コーチになるあたりとかも、もともとスポーツ選手でいろいろ含むところがあるらしいという説明はあるのだがけっこう強引である。全仏大会のあともちょっとだらだらした感じで、ルイとローズの関係の描写とかも割合すっ飛ばしていると思う。いくらベタなスポ根コメディとはいえもうちょっとなめらかな作りにするか、あるいは逆方向に吹っ飛ばしてしまったほうがよかったのでは…とも思う。

 とはいえローズ役のデボラ・フランソワとルイ役のロマン・デュリス、またまた脇を固めるベレニス・ベジョやちょっとだけ出てくるミュウ・ミュウなどが頑張っているのと、美術やファッションがカラフルでポップなのでけっこう面白く見られる。あとなんていったって女性が主人公のスポ根映画としては珍しくヒロインがちゃんと全部勝って終わるのがいい(女性のスポーツ映画って最後勝てないで終わるものが多くて、あのへんは私はあまり好きではない)。それから一番最後、ユーザの技術のおかげで機械が発展を…というオチもいいと思う。
 
 しかし、この映画が日本公開されるのに1960年代のUKのオシャレな女性労働者たちの男女同一賃金運動を描いた『メイド・イン・ダゲナム』が未公開でDVDすら出てないっていうのはなんか不満だなぁ…(iTunesとかでは『ファクトリー・ウーマン』として見れるみたいだけど)『メイド・イン・ダゲナム』のほうが脚本とかは良かったと思うし、女性労働者の地位向上っていうテーマをもっと掘り下げてたし、オシャレ度でも遜色なかったと思うんだけど。