モノで見る地中海史〜東京都美術館「ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり― 」

 「ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり― 」を東京都美術館で見てきた。

 これ、キャッチフレーズが「ルーヴルの『女神』、来日」で、なんかルーヴルの彫刻とかを適当に並べた展示だったらどうしよう…とか思いつつ地中海だっていうから…と思ってあまり期待しないで見に行ったのだが、予想より全然面白かった。なんかたぶん女神のキャッチフレーズはそんなにこの展覧会の全貌をとらえてなくて、実際の内容は古代から20世紀初頭まで、モノを使って交易・文化交流を中心とした地中海史を見せるというようなもの。きちんとこういうコンセプトを立ててそれにルーヴルの物資力が加わっているため、装飾品のデザインの流行がキリスト教イスラム教の広がり、侵略や戦争、交易ルートの活性化などに影響されて変わっていく様子がよくわかる。

 個々の展示品にも面白いものが結構あって飽きさせない。アイキャッチに使われている女神の彫刻はもちろん、おさなかの形の香油入れとか天使がイルカと遊ぶモザイクなんかはいかにも古代から中世末期の地中海のおしゃれデザインという感じ。これがだんだんキリスト教モチーフのお皿とかになり、さらにイスラム世界との交易が盛んになってくるとブリテン島なんかからトルコ方面へと輸出される機械や装飾品が出てくるようになる。ナポレオンの時代は『エジプト誌』で、グランドツアー関係の資料もあるし、最後は20世紀初頭のイスタンブールのパノラマ(パノラマって残ってるものが大変少ない)なんかで閉める。モノで歴史を見ることに興味ある人は必見だと思う。