Full Monty『新・戦国浪漫 イナズマ』〜面白いところもあるがオチがちょっと安易か

 池袋演劇祭の審査ということで、萬劇場でFull Monty『新・戦国浪漫 イナズマ』を見てきた。

 あらすじは本能寺で信長の死体が出てこなかった→信長は生きてるという歴史ネタで、これに明智光秀方についた暗殺集団阿修羅をからめた時代ものである。かなり歴史改変をしており、つんつるてんの着物を着たお市甲斐姫がやたら武器をとって活躍したりする。

 ところどころ入るちょっと寒いギャグ以外はわりとちゃんとした時代もので面白いところもたくさんある。とくに舞台に段を作り、そこに役者を置いて活人画みたいな場面を作ったりするあたりヴィジュアルにも工夫が見られるのだが、結局愛とか絆とかに回収してしまうオチは私はかなり白けた。

 ちょっと面白いと思ったのは、この芝居では森蘭丸を女優が演じており、さらに途中で蘭丸が女装して阿修羅を騙すという場面があることである。シェイクスピア劇なんかでは女役の男優が途中で男装したりする場面があるが、その逆を見ているみたいでなかなかフレッシュだった。蘭丸を女性が演じるというのは「永遠の少年」であるピーターパンを女性が演じるみたいな感じで日本人には比較的わかりやすいところがあるのかもと思うのだが、とはいえ男装の時の蘭丸があまりにもさわやかな少年っぽくなってしまい、かえって信長との関係におけるホモエロティックなコノテーションがなくなって(信長といる時は非常に少年らしいが女装になるとつやっぽく阿修羅を誘惑したりする)少し物足りない感じもした。